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社説・コラム

天風録 『中東の『平和』』

 今こそ平和の時だ―。トランプ米大統領はきのうのイラン攻撃を伝えるSNSにそうも記した。呼応するようにイスラエルのネタニヤフ首相は、繁栄と平和な未来を導くと米国の攻撃を称賛した。力による平和の信奉には危うさしか感じない▲顧みれば、トランプ政権の1期目から再三、この2人は中東に緊張をもたらしてきた。例えばシリアから奪った占領地ゴラン高原のイスラエル主権を認め、周辺国の反発を招いたことも▲2期目も相変わらずだ。パレスチナ自治区ガザで深刻な人道危機が続いているのに、イスラエルの傍若無人の振る舞いに歯止めをかけようとしない。今月は国連で、人道支援の制限解除をイスラエルに求める決議案に拒否権まで行使した▲イランを巡っても、イスラエルに自重を促すどころか、攻撃の片棒を担ぐ始末。自分たちの核兵器は棚に上げて「イランの保有は許さない」のは勝手過ぎないか。イスラムの教えで核兵器製造は禁じられていると、イランは何度も説明しているのに▲力で敵対者を押さえ付けても、火種は消えまい。人類が歴史から学んだ教訓のはず。平和の時が来たと、中東の人たちが心から思える日はいつになるのだろう。

(2025年6月23日朝刊掲載)

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