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線で見る 沖縄の基地問題 映画「太陽の運命」 佐古忠彦監督 29日 広島・尾道で舞台あいさつ

闘う歴代知事の苦悩に迫る

 1995年に沖縄で起きた米兵による少女暴行事件から30年。佐古忠彦監督(60)の新作ドキュメンタリー映画「太陽(ティダ)の運命」は、基地のない沖縄を求めて闘い続ける歴代県知事の苦悩に肉薄した。「沖縄で発生する一つ一つのニュースを瞬間的な点で見るか、つながる線で見るかで見え方は大きく違う」と佐古監督。「この30年間、沖縄を放置してきたのは誰なのか。あらためて考えたい」と力を込める。

 琉球放送の膨大な取材映像や関係者の率直な証言を基に、日米両政府と対峙(たいじ)した知事たちの歩みを見つめた。中でも、沖縄戦の生存者として沖縄史を研究し革新勢力に推された大田昌秀さん、代々の保守政治家として自民党県連を背負った翁長雄志(おながたけし)さんの存在感は圧倒的だ。政治的立場の違いから激しく反目した2人だが、時を経てその言葉と行動は見事に重なり合う。

 TBSの報道番組や映画製作を通じて沖縄と向き合ってきた佐古監督。「リーダーは常に県民の視点で言葉を発し、県民も応える。信頼関係が他の地域とは違う」と受け止める。「沖縄というアイデンティティーに生きた2人。政争のくびきを離れて生き方が定まった翁長さんは、どんどん自分を出せるようになった。直接の和解はなくても、魂が触れ合う瞬間はあったはず」と推し量る。

 名護市辺野古では新基地建設を前提にした海底の地盤改良工事が進む。「映画の続きは現実の中に起きている。沖縄の人々はかつての歴史の延長線で今を見ている。本土側の人間がどう受けとめるのかこそが問われている」

 広島県内の2映画館で佐古監督の舞台あいさつがある。広島市中区のサロンシネマで29日午前10時15分からの上映後、尾道市のシネマ尾道で同日午後1時15分からの上映後に登壇する。(渡辺敬子)

(2025年6月21日朝刊掲載)

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