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被爆オリンピアン 歩みたどる 広島で高田静雄展 写真作品やインタビュー肉声

 戦前は砲丸投げのオリンピック選手、被爆を経て戦後は写真家に―。波乱の人生をたどった広島市出身の高田静雄さん(1909~63年)の歩みを紹介する「キセキ」展が中区のギャラリーGで開催中だ。平和記念公園で撮影した代表作とともに、自身の半生を語った貴重な肉声を会場に流す。

 高田さんは「砲丸王」とも呼ばれ、36年のベルリン五輪に出場。引退後の45年8月6日、爆心地から約680メートルの勤め先で被爆した。原爆で長女を失い、自身も後遺症に苦しむ。失意の中、趣味だったカメラを手に取った。五輪で交流のあった写真家金丸重嶺(しげね)さんらに本格的に学んだ。

 展示は、孫で写真家の高田トシアキさん(62)=西区=が被爆80年を機に企画した。展示作約40点のうち、半数近くは未発表とみられ、祖父のネガを保管するトシアキさんが現像した。

 肉声は約13分。オープンリールのテープに残されていた。60年8月に放送されたラジオ番組を録音したとみられる。同年のローマ五輪で、関連する現地の写真展に出品を果たした高田さんが、インタビューに答える形式。被爆後の自身の足跡を振り返る。

 展示は肉声に合わせて、ローマで展示された「準備運動」(58年)などを並べるほか、原爆慰霊碑前で米国人夫婦が一歩を踏み出す代表作「平和への道」(57年)や平和記念公園が被写体の作品も紹介する。

 トシアキさんが同公園を撮影した写真も展示する。「自分の作家活動は、祖父の作品を伝え継ぐためにあったのだと思える。大勢に見てほしい」と願う。29日まで。(福田彩乃)

(2025年6月25日朝刊掲載)

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