原爆資料 継承するために 広島で19日 国際シンポ「未来への記憶の遺産」
25年6月30日
手記や写真 生かし方を議論
広島市立大広島平和研究所(平和研)と中国新聞社、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)は7月19日、国際シンポジウム「未来への記憶の遺産―原爆資料をどう継承するか」を広島市中区の広島国際会議場で開く。被爆80年を迎えて原爆被害を直接語れる人が少なくなる中、手記や写真、記録などがその実態を伝える手段として重みを増す。これらの資料をいかに残し、どう生かしていくかを関係者が議論する。(藤村潤平)
ノーベル平和賞を昨年受賞した日本被団協。ノルウェー・オスロであった授賞式の演説で、田中熙巳(てるみ)代表委員が「(被爆の)実相の普及に全力を傾注する組織になってもらえるのではないかと期待している」と言及した団体がある。全国の被爆者運動の資料を収集、保存するNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」(東京)だ。
今回のシンポでは、同会事務局の栗原淑江さんが基調講演する。同会は2011年にノーベル賞作家の大江健三郎さんたちが発起人になり設立。これまでに被爆者の手記や調査・研究の書籍、日本被団協の文書など計2万点以上を収集してきた。倉庫など計4カ所に分散する資料を集約して一般公開する「継承センター」の開設を目指しており、栗原さんがその意義や現状について話す。
報告者としては3人が登壇する。原爆資料館(広島市中区)の落葉裕信学芸係長は、初代館長の長岡省吾さん(1901~73年)が半生をかけて収集した資料を紹介する。同館は、特別コレクションとして長岡さんが焦土を歩いて集めた被爆資料や記録写真、調査資料など約1万2千点を収蔵し、常設展示などに生かしている。
RECNAの山口響特定准教授・客員研究員は、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)などの資料から被爆者運動の歩みを解説する。中国新聞社の水川恭輔編集委員は、本紙で昨年8月から連載中の「ヒロシマ ドキュメント」に掲載した被爆直後の写真の意義などについて語る。
続いて栗原さんたち登壇者4人によるパネル討論がある。モデレーター(司会)は平和研の四條知恵准教授が務める。ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長のビデオメッセージも上映する予定。午後1時半~4時半、広島国際会議場地下2階ヒマワリ。入場無料。同時通訳、手話通訳付き。事前申し込み不要。平和研☎082(830)1811。
(2025年6月30日朝刊掲載)