朝凪(あさなぎ) 高層ビル 壁に残る証し
25年7月2日
あと1カ月と1日。広電の新路線が動き出すと、広島駅前はいっそうにぎやかになる。かつてBブロックと呼ばれた再開発エリアの高層ビルの壁面にガラスケースに収められた鉄扉がある。爆心地から約1・9キロにあった旧住友銀行東松原支店の一部だ。爆風でゆがんでいる。
再開発が本格化する頃、地権者の取りまとめ役の男性にこの被爆建物の扱いを尋ねた。すると「分かっとるよ」とひと言。悩ましげな顔に覚悟を感じた。曲折の末、被爆の痕跡がはっきりと分かる鉄扉の一対が猿猴川沿いにひっそり残された。
あれから十数年。一帯はかつての景色を思い出せないほど様変わりした。だからこそ、わずかな「証し」にも重みがある。男性も今は亡い。ガラス越しにあの日を思う。汗をかいた人たちへの感謝とともに。(平和メディアセンター・藤村潤平)
(2025年7月2日朝刊掲載)
再開発が本格化する頃、地権者の取りまとめ役の男性にこの被爆建物の扱いを尋ねた。すると「分かっとるよ」とひと言。悩ましげな顔に覚悟を感じた。曲折の末、被爆の痕跡がはっきりと分かる鉄扉の一対が猿猴川沿いにひっそり残された。
あれから十数年。一帯はかつての景色を思い出せないほど様変わりした。だからこそ、わずかな「証し」にも重みがある。男性も今は亡い。ガラス越しにあの日を思う。汗をかいた人たちへの感謝とともに。(平和メディアセンター・藤村潤平)
(2025年7月2日朝刊掲載)