[被爆80年] 「日常」にある平和 再考 瀬戸田の平山郁夫美術館 あすから「原爆投下80年」展
25年7月2日
被爆資料の写真や平山さん作品展示
「原爆投下80年 日常とその破壊」展が3日、尾道市瀬戸田町の平山郁夫美術館で始まる。日本画家の平山郁夫さん(1930~2009年)が描いた古里・瀬戸田町の風景や原爆画、被爆資料を撮影する写真家土田ヒロミさんの作品を通じ、「日常」にある平和を再考する。9月17日まで。(藤田智)
平山さんは旧制修道中3年生の時、広島市で被爆。東京美術学校(現東京芸術大)を卒業し画家として歩み始めた頃は、葛藤を抱きながらも原爆を巡る直接的な表現を避けたとされる。会場に展示する約20点のうち「家路」(52年)などの初期作品は、牧歌的な瀬戸内の情感が見て取れる。
原爆症に苦しみながら生み出した「仏教伝来」(59年)から20年後に広島市を訪ね、業火の中の不動明王を描いた「広島生変図」(79年)の発表に至った。シルクロードシリーズ「アフガニスタンの砂漠を行く・日」(07年)には文化交流を平和の礎とみる精神がにじむ。
土田さんは原爆資料館(広島市中区)にある被爆資料の撮影を80年代から続ける。会場では、作品群「ヒロシマ・コレクション」から約40点を紹介。火災で前面を失った「溶けた仏像」(82年)や、広島第二陸軍病院で被爆しながらも、救護活動に当たった女性の「看護師の制服」(18年)を並べる。
関連イベントとして6日午後2時から「文化交流が生み出すもの」と題し、広島大大学院の留学生たちが意見を交わす。13日午後2時から土田さんのギャラリートークもある。会期中無休。一般千円、高大生500円、小中生300円。
(2025年7月2日朝刊掲載)