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[被爆80年] 「口伝隊」10回目上演へ 新国立劇場で31日から

 新国立劇場(東京)は31日から8月3日まで、広島への原爆投下後にニュースを口頭で伝えた少年を描いた井上ひさし作の朗読劇「少年口伝隊一九四五」を上演する。講師を務めていた演劇研修所の研修生のために書き下ろし、10回目の公演。被爆80年の夏に「現実に起きたことを人ごとではないと感じて」と伝える。

 原爆直後に街角でニュースを読み上げる「口伝隊」になった少年3人が、放射線による急性障害などに襲われながら懸命に生きようとする姿を描く。口伝隊役の防府市出身の菊川斗希さん(23)たち研修生12人は5月に稽古入り。6月に原爆資料館(広島市中区)を訪れ被爆について学んだ。

 菊川さんは「悲しいとかひどいといった言葉では片付けられない。上っ面ではない深い思いを伝える演技が必要だ」と自らに問いかける。作品に関連する軍隊用語や太平洋戦争、広島の地理を独自に調べ、B5ノートに書き留めている。「知っているかどうかは演技に大きく響く」という。

 研修生同士で作品への理解を深める話し合いも重ねる。向井里穂子さん(27)は「平和は勝手には生まれない。行動が必要と伝われば」と意気込む。東京都渋谷区の新国立劇場☎03(5352)9999。(堀晋也)

(2025年7月3日朝刊掲載)

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