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[被爆80年] 森下弘さん 母校で最後の講義 広島大で半生語る 平和への取り組み託す

 平和教育に力を注いだ被爆者で元高校教諭の森下弘さん(94)=広島市佐伯区=が24日、母校の広島大で最後の講義をした。原爆で体と心に傷を負いながら、自らの体験が繰り返されないよう核兵器廃絶に向け行動した半生を語った。

 南区の霞キャンパスで2021年から平和科目の1こまを担当。この日は医、歯、薬学部の2年生約80人に1時間話した。講義の冒頭で「いま原爆が落とされたら、皆さんどうしますか」と投げかけ、静まり返る教室を見渡した。

 広島一中(現国泰寺高)3年だった14歳の時、学徒動員先で被爆した。原爆で失った左耳を見せながら、当時の惨状を語った。教員になり、原爆や核問題に関する高校生の意識調査や平和教育の副読本作りに取り組んだ時代を振り返った。

 原爆の惨禍と平和の大切さを草の根で伝える「ワールド・フレンドシップ・センター」の理事長も長年務めた。次世代の力を感じたとし、「若い人が仲間を募り平和のために何かやってほしい」と託した。聴講した医学部2年谷村倖さん(20)は「つらい体験を踏まえ平和活動へつなげた森下さんのような人に自分もなりたい」と感謝した。(山本祐司)

(2025年7月25日朝刊掲載)

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