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[被爆80年] 核被害「忘却にあらがおう」 ノーベル賞委員長 東京で講演

 日本被団協に昨年のノーベル平和賞を授与したノルウェー・ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長(40)が27日、東京の上智大であった集会で講演した。核兵器は使われてはならないという「核のタブー」を守るため「物語を語ろう。歴史を学び、忘却にあらがい、声を上げよう。私たちの生存がかかっている」と訴えた。

 集会は、委員会事務局のノーベル研究所の主催で、被団協と上智大が共催。約600人を前にフリードネス氏は「タブーは壊れやすく、記憶は薄れていく。だからこそ私たちは耳を傾けなくてはならない」と呼びかけた。

 さらに証言、写真、日誌、遺品の収集や展示、文献の作成、芸術、教育は記憶を守る努力だと指摘して「全て平和のためになる。軍縮の一環だ」と強調。若者に向け「あなたたちがこれからの記憶の管理人だ。沈黙の拡大を決して許してはいけない」と語りかけた。

 被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(93)も登壇し「話せる原爆被害者の声を聞き、次の世代が工夫して運動を築くよう期待している」と語った。

 フリードネス氏は集会前の記者会見で、委員会が受賞者の母国を訪れるのは初めてと明かし「50歳も年の離れた田中さんと私が協力すること自体、たいまつを受け継ぐ取り組みの一つだ」と話した。(宮野史康)

(2025年7月28日朝刊掲載)

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