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非戦平和への誓い 新たに 本願寺広島別院で原爆忌80周年法要 大谷門主「戦争協力の歴史 心に銘記」

 本願寺広島別院(広島市中区)と浄土真宗本願寺派安芸教区は今月上旬、「全戦争死没者追悼法要並びに原爆忌80周年法要」を同別院本堂で開いた。僧侶や門徒たち約350人が参加。同派トップの大谷光淳門主(48)や、記念布教の講師を務めた僧侶の言葉に触れ、平和の尊さをかみしめた。(城戸良彰)

 大谷門主は被爆70年の2015年以来、10年ぶりに法要に参加し、導師を務めた。平和への思いを述べる中で、原爆の惨禍と戦後広島の苦難の歴史を忘れず、「非戦平和への誓いを新たにすることが大切です」と強調。戦争遂行に協力した教団の歴史にも触れ、慚愧(ざんぎ)の思いを「改めて心に銘記すべきでしょう」と説いた。

 ロシアによるウクライナ侵攻や中東での紛争などにより、「依然として核兵器の存在は人類の生存に大きな脅威を与えている」と指摘。阿弥陀如来の慈悲の心、「世の中安穏なれ」と願った親鸞聖人の心に立ち返り、念仏者として核廃絶の実現へ歩みを進めていくよう呼びかけた。

 記念布教では、被爆2世でもある西法寺(佐伯区)の吉崎哲真住職(72)が登壇した。吉崎住職も戦中の教団が戦争を肯定したことに言及。プロパガンダによる戦争の正当化は現代の世界にも見られるとし、「日々の生活の中で平和の尊さを考えてほしい。何もしなければ必ず平和は崩壊する」と語った。

 法要に参加した、広島市佐伯区の農業中尾毅さん(80)は「門主自ら被爆地を訪れ、思いを述べる姿に心打たれた」と話す。自身は胎内被爆者といい、「平和へ実際の行動を促す言葉に熱意を感じた」と受け止めた。

 大谷門主は今回、広島に先立ち沖縄と長崎も訪問。それぞれ戦没者の追悼法要に参加した。

校庭で後輩火葬「忘れないで」 「記憶のバトン 未来へつなぐ」

 被爆80年の節目となった今回の追悼法要では、惨禍を知る世代が少なくなる中、次世代へ記憶と平和への願いを受け継ぐ取り組みもあった。90代の被爆者2人が体験を証言したほか、宗門校を代表して高校生2人が誓いのメッセージを読み上げた。

 高等女学校の学生時代に被爆した切明千枝子さん(95)=広島市安佐南区=は、亡くなった後輩たちを校庭で火葬した記憶に触れ、「広島中でたくさん遺体が埋められた。街を歩くときは遺骨が埋まっているかもしれないと思ってほしい。広島はそういう街だと忘れないで」と訴えた。

 森下弘さん(94)=佐伯区=も建物疎開の作業に動員される中で被爆。大やけどを負いながら逃げた市内は「地獄だった」と振り返り、「高齢となったが今後も国内外で証言活動を続けたい」と語った。

 書家でもある森下さんは法要に際し、非戦の願いを表した仏説無量寿経の言葉「兵戈(ひょうが)無用」を揮毫(きごう)。法要後、「言葉の通り武器を捨て、平和な世界が訪れてほしい」と話した。

 崇徳高(西区)2年の横山律斗さん(16)はメッセージで、被爆証言を直接聞ける最後の世代として「記憶のバトンを未来へつなぐ」と宣誓。進徳女子高(南区)2年の大槻華奈さん(17)も「高校生だからできないのではなく、高校生だからできることを考え行動する」と述べた。(城戸良彰)

平和への思い うねりつくる

 本願寺広島別院の熊谷正明輪番(65)に、今回の追悼法要の意義について聞いた。

 ご門主自ら法要に来られ、非戦平和の願いを述べる姿を見せられた。思いの強さは皆に伝わったと思う。平和を目指す上では広く有縁の方々に呼びかけ、うねりをつくらないといけない。

 教団として過去の戦争に加担したことへの反省を、前門様(大谷光真前門主)は繰り返し表明された。ご門主も、その思いをしっかり受け継がれていると感じた。

 今年は猛暑を懸念して屋外会場は設けず、(地域ごとの本願寺派寺院でつくる)組(そ)ごとに参拝を募ることもしなかった。それでも会場の本堂は満堂となった。

 私は昨年12月の着任だが、この法要が大切にされていることがよく分かり、頭の下がる思いがした。今後も平和の尊さを再確認する場として続けていきたい。

(2025年7月28日朝刊掲載)

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