首相進退 被爆者気がかり 6日面会予定「タイミング悪い」
25年7月26日
被爆80年を前に、広島の被爆者団体が石破茂首相の進退に気をもんでいる。8月6日に予定する首相との面会で核兵器禁止条約への参加などを求める構えだが、自民党の参院選大敗で退陣するとの見方が強まり「タイミングが悪い」との嘆きも。「政局とは関係なく要望を受け止めて」と切実に訴えている。
近年、首相は平和記念公園(中区)での平和記念式典後に近くのホテルへ移り、市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」に出席。二つの広島県被団協など被爆者7団体の代表者から被爆者援護や核政策を巡る要望を聞き取り、意見を交わす。昨年までは3年連続で地元選出の岸田文雄前首相が出向いた。石破首相は昨年10月の就任後、初めて臨む見通しだ。
ただ、今年は不安定な政局下での開催となる。昨秋の衆院選で30年ぶりの「少数与党」政権となり、今月の参院選でも自民党の議席を大きく減らして首相の求心力はかつてなく低下。永田町に加え、地方からも退陣要求が出る事態となっている。
県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(83)は「最悪のタイミング。今の石破さんに訴えても自身の進退で上の空かもしれん」とこぼす。ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の代表委員として1月に官邸で面会したが、「被爆者に残された時間は少ない。核兵器禁止条約への参加は何度でも直訴する」と言う。
もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(80)は「要望を聞く会に参加する以上、被爆者の願いを受け止める覚悟を持ってほしい」と望む。参院選で候補者が日本の核武装に言及した参政党が躍進した状況に危機感を示し、「政府は今こそ被爆者救済に本腰を入れ、世界に核廃絶を訴える時だ」。
原爆の日の前後に時の首相の進退が問われるのは極めて異例。広島選出だった宮沢喜一元首相は1993年7月の衆院選敗北による退陣で、8月6日の平和記念式典へ出席できず、「要望を聞く会」も中止となった。聞く会を担当する市調査課は「仮に首相が変わっても要望は政府内で引き継がれる。被爆者の訴えを受け止め、施策に反映してもらえるよう準備を進める」としている。(樋口浩二)
被爆者代表から要望を聞く会
首相や厚生労働相が被爆者団体の代表者と面会し、要望を聞き取る会合として広島市が8月6日に開いている。初会合は三木武夫首相時代の1976年で今年で49回目。中止となったのは宮沢喜一内閣の総辞職に伴う93年だけ。小泉政権下は2001年を除き首相欠席が続いたが、08年の福田康夫首相以降は17年連続で時の首相が出席している。
(2025年7月26日朝刊掲載)
近年、首相は平和記念公園(中区)での平和記念式典後に近くのホテルへ移り、市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」に出席。二つの広島県被団協など被爆者7団体の代表者から被爆者援護や核政策を巡る要望を聞き取り、意見を交わす。昨年までは3年連続で地元選出の岸田文雄前首相が出向いた。石破首相は昨年10月の就任後、初めて臨む見通しだ。
ただ、今年は不安定な政局下での開催となる。昨秋の衆院選で30年ぶりの「少数与党」政権となり、今月の参院選でも自民党の議席を大きく減らして首相の求心力はかつてなく低下。永田町に加え、地方からも退陣要求が出る事態となっている。
県被団協の箕牧(みまき)智之理事長(83)は「最悪のタイミング。今の石破さんに訴えても自身の進退で上の空かもしれん」とこぼす。ノーベル平和賞を受賞した日本被団協の代表委員として1月に官邸で面会したが、「被爆者に残された時間は少ない。核兵器禁止条約への参加は何度でも直訴する」と言う。
もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(80)は「要望を聞く会に参加する以上、被爆者の願いを受け止める覚悟を持ってほしい」と望む。参院選で候補者が日本の核武装に言及した参政党が躍進した状況に危機感を示し、「政府は今こそ被爆者救済に本腰を入れ、世界に核廃絶を訴える時だ」。
原爆の日の前後に時の首相の進退が問われるのは極めて異例。広島選出だった宮沢喜一元首相は1993年7月の衆院選敗北による退陣で、8月6日の平和記念式典へ出席できず、「要望を聞く会」も中止となった。聞く会を担当する市調査課は「仮に首相が変わっても要望は政府内で引き継がれる。被爆者の訴えを受け止め、施策に反映してもらえるよう準備を進める」としている。(樋口浩二)
被爆者代表から要望を聞く会
首相や厚生労働相が被爆者団体の代表者と面会し、要望を聞き取る会合として広島市が8月6日に開いている。初会合は三木武夫首相時代の1976年で今年で49回目。中止となったのは宮沢喜一内閣の総辞職に伴う93年だけ。小泉政権下は2001年を除き首相欠席が続いたが、08年の福田康夫首相以降は17年連続で時の首相が出席している。
(2025年7月26日朝刊掲載)