被爆者 苦難越える象徴 ノーベル賞委員会 フリードネス委員長に聞く
25年7月30日
核廃絶 諦めずに
日本被団協にノーベル平和賞を授与したノルウェー・ノーベル賞委員会のヨルゲン・フリードネス委員長(40)が、中国新聞のインタビューに応じた。29日までの日本滞在中に、被爆地広島を訪れ、東京都では集会で講演した。被爆者を「苦難を乗り越える象徴」とたたえ、核兵器廃絶を決して諦めないよう訴えた。(聞き手は宮野史康)
―広島、長崎の訪問はいかがでしたか。
被爆地には人の心を揺さぶる力がある。世界中の人にこの地で被爆者の訴えを聞いてほしい。気持ちを奮い立たせてくれる。80、90代になっても諦めを知らず、核兵器の廃絶に人生をささげている。まさに苦難を乗り越える力の象徴だ。
―核実験の被害者もヒバクシャと呼ばれます。
全ての被爆者をたたえたい。(核兵器は使われてはならないという)核のタブーを確立し、維持してきた。各地で繰り返された核実験の被害者の訴え、世界中の反核運動はみな、核戦争がもたらす非人道的な結末への警告となり、タブーを強化する。
―授賞後も核兵器を巡る国際情勢は厳しさを増しています。
平和賞を通じて個人や団体、そして政治家に被爆者の証言を聞くよう呼びかけた。今回の訪日で注目の高さを感じた。世界を見渡しても、多くの人が決意を新たにしている。核廃絶は長い道のりかもしれない。でも被爆者の訴えこそが「ネバーギブアップ」だ。
―トランプ米大統領はは平和賞に関心があるようです。
候補者や推薦者は50年間、公開しない。ただ、私やあなたは十分に若い。50年後に電話をください。毎年、選考には重圧がかかる。今のような戦争が絶えない世の中で、平和に最も貢献した人を見つけるのは容易ではない。今年10月、昨年のように誰もが納得する受賞者を発表したい。
Jorgen Frydnes
1984年ノルウェー西部ベルゲン生まれ。英ヨーク大で修士号取得(国際政治学)。国境なき医師団に従事し、2011年にノルウェー南部ウトヤ島で起きた無差別テロ事件では復興活動の責任者を務めた。21年に史上最年少でノーベル賞委員会の委員となり、24年から現職。
(2025年7月30日朝刊掲載)