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核抑止は高いリスク オーストリア外務省のクメント軍縮局長に聞く 連帯し核禁条約に勢いを

 広島市を訪れているオーストリア外務省のアレクサンダー・クメント軍縮局長が3日、中国新聞のインタビューに応じた。核兵器を巡る国際情勢は、使用を示唆する威嚇や戦力強化への動きが目立ち、核抑止への依存が深まる様相も見せる。核兵器禁止条約の第1回締約国会議議長も務めたクメント氏に現状の受け止めや危機感について聞いた。(小林可奈)

 ―広島訪問は2014年以来、2度目ですね。
 この場所で被爆者と対話すると、核兵器の問題は抽象的なものではなくなる。外交の場で核兵器は概念的に捉えられがちだが、被爆証言を聞くと、非人道的な被害をもたらす大量破壊兵器だと改めて思わされる。

 ―自衛隊と米軍の机上演習で、中国が核兵器の使用を示唆する発言をしたとの設定に自衛隊が「核の脅し」で対抗するよう求めたとされるなど、日本は核抑止への依存を強めているようです。
 外交官として他国の政策に見解を述べる立場にないが、核による脅しや、脅しへの対抗は極めて危険であると言いたい。核抑止は、破綻すると使用に至る高いリスクと不確実性をはらむ。真に持続可能な安全保障の手段であるかを、批判的に検証する必要がある。

 ―来年は核兵器禁止条約の第1回検討会議が予定されています。
 (人類滅亡を午前0時に見立てた)「終末時計」が真夜中に近い今、この条約の重要性は増している。最も大切なのは、各国と市民社会が連帯して核兵器を巡る現状への懸念を訴え、条約の勢いを広げることだ。加盟国は増え、9月も米ニューヨークで署名式がある。検討会議は加盟国を増やす良い機会。日本政府もぜひオブザーバー参加してほしい。

(2025年8月4日朝刊掲載)

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