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[被爆80年] 「2世」作曲家 思い代弁 信長さん 新作の合唱曲を披露

平和公園発 祈りを音楽に乗せ

 被爆2世の作曲家、信長貴富さん(54)=東京=が3日、平和への祈りを込めた新作の合唱曲を広島市中区で初演した。原爆犠牲者の思いを代弁する約3分の曲。原爆ドーム対岸の元安川親水テラスで、県内外の合唱団員たち約170人が歌声を響かせた。(山本祐司)

 混声4部の「誰にも聞こえぬ声で」。落ち着いた曲調で、原爆で一瞬にして命を奪われた人たちの無念さに思いをはせる。この日は、午前8時15分に全員で黙とうをささげた後、信長さんの指揮で合唱した。

 旧日本銀行広島支店(中区)で6日まで開かれるイベント「平和と美術と音楽と」(実行委員会主催)の一環。市内で合唱を指導する縄裕次郎さん(41)=西区=が信長さんに作曲を依頼し、東京のバリトン歌手宮本益光さんが作詞した。

 信長さんの母幸子さん(83)は3歳の時、広島市舟入幸町(現中区)の自宅で被爆した。母親がとっさにかばってくれ、腕に傷が残る程度のけがで済んだが、髪の毛が抜けたため小学生時代はいじめに遭ったという。

 信長さんは30代になってから「被爆2世」を意識し、曲に平和への思いを込めるようになった。この日、演奏後に大きな拍手を浴び、「みんなで一つの音楽をつくり、平和につながったと思う」と頰を緩めた。

(2025年8月4日朝刊掲載)

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