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[変わる街] 広島駅一帯 守られた被爆ポンプ 南口 復興の歴史伝える

 JR広島駅(広島市南区)の南口一帯に4基のさびた手押しポンプが残っている。再開発や広島電鉄の「駅前大橋線」の開通で街が大きな変貌を遂げる中、広島の復興の歴史を物語る「被爆ポンプ」として、人々の手で守られている。(加納亜弥)

 再開発ビル「ビッグフロントひろしま」北側の緑地帯にある1基は今、鉄パイプで囲われている。駅とビルを結ぶ歩行者用デッキの建設現場にあるため、「被爆ポンプ」「接触がないように」と作業員に注意を促す札もかかる。

 工事を担当する広電広島駅JV工事事務所の小林優也さん(30)は「地域の財産。傷つけないようにしないと」と細心の注意を払う。原爆資料館(中区)のピースボランティアで、ポンプの保存を訴えてきた永原富明さん(78)=呉市=は「うれしゅうて、うれしゅうて。工事の人が守ってくれとる」と目を細める。

 残る3基は3日の駅前大橋線の開業に伴って廃止となる線路沿いにある。市は歩道を2倍以上に広げ、歩いて楽しい通りに再生させる方針だが、ポンプはいずれも現在地に残すという。

 かつてポンプは、駅から路面電車の沿線に6基並んでいた。うち3基は再開発に伴って廃棄される危機にあった。永原さんは「このポンプは被爆しているはず」と証人集めに奔走。市は2014年、「被爆地復興の歩みを伝える資料」として2基を原爆資料館などで保存し、1基を緑地帯で飾ることにした。

 永原さんは「復興を見届けてきた『物言わぬ証人』として元気でいてほしい」とポンプの存在を多くの人に知ってほしいと願っている。

(2025年8月2日朝刊掲載)

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