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核兵器不使用 続く願い込め 大崎上島出身 穂高健一さんが小説刊行 日本の歩み 高校生目線で追う

 広島県大崎上島町出身の歴史作家、穂高健一さん(81)=東京都葛飾区=が被爆80年に合わせ、書き下ろし小説「八月十日よ、永遠なれ」を刊行した。広島と長崎への原爆投下に至る日本の歩みを高校生たちの目から追う著者初の青春小説だ。

 穂高さんは戊辰戦争で戦死した若者が主人公の「広島藩の志士」、幕末の福山藩主で老中の阿部正弘を描く「安政維新」など骨太の小説を世に出した。薩長主導の軍事国家への疑問から「原爆投下を避ける道はなかったのか」と考えてきた。

 新作は著者のそんな歴史観を映している。東京の高校2年生たちが修学旅行で広島を訪れ、似島に渡る。日清戦争以来、軍都の玄関口となり、原爆に遭った人たちが運ばれた島。その歴史を知ることで、恋に進路に悩みを抱える男女6人が日本の近代に関心を持つ。

 「歴史クラブ」を結成して臨んだ文化祭。明治維新の指導者に影響を与えた吉田松陰の思想から始まり、大正、昭和と対外戦争を重ねた歴史を寸劇を交えて発表する。なぜ広島と長崎に原爆は落とされたのか。二度と核兵器を使わせないために何ができるのか―。

 表題の意味も深い。長崎原爆翌日の8月10日にトルーマン米大統領はさらなる原爆投下の中止を命令したとされる。その日を世界の節目と捉え、今も残る1万2千発の核兵器の不使用が続くよう願いを込めたという。

 作中に2022年導入の「歴史総合」という教科名が登場する。世界の中の日本の姿を近現代中心に学ぶ。「今の高校生は意外と学んでいる。明治維新以降の歴史を授業でほとんど教わらなかった大人たちも一緒に読んでほしい」と穂高さんは願う。南々社刊、1760円。(岩崎誠)

(2025年8月5日朝刊掲載)

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