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連載・特集

朝凪(あさなぎ) 「忘れたくない」刻む一枚

 先月、爆心地から約2キロで被爆した西岡誠吾さんの葬儀に同僚と参列した。

 当時13歳だった西岡さんは、同級生192人を原爆で亡くした。体調が悪く、建物疎開作業に行かなかったため、偶然にも生き永らえたという。わびる気持ちで級友の顔や当時の状況を絵にし、紙芝居などで後世に訴えていた。

 昨年、制作してきた60枚以上の紙芝居に囲まれる西岡さんを撮影した。ハーモニカが上手だったという同級生の伊藤君を描いた絵もそこにあった。「あの笑い顔を忘れたくなくて」と話していた。

 葬儀会場には、これまで描いた絵とともに、自分が撮影した西岡さんの写真も並んでいた。取材で出会った人たちを忘れまい―。西岡さんに及ばずとも、同じ気持ちで写真に向き合いたい。(映像担当・山田尚弘)

(2025年8月5日朝刊掲載)

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