[被爆80年 リレーエッセー] エチオピア平和省紛争管理担当国務大臣 チェルゲタ・ゲネネ 国の未来 広島再建に重ね
25年7月10日
2月の広島訪問は、心を強く揺さぶられる経験だった。このまちから歴史、復興、レジリエンス(回復力)の精神を学ぶ中で、過去の惨劇にはひどく心が痛んだが、同時に崇高で力強い人間の精神力、荒廃から希望が生まれる可能性を目の当たりにした。
平和記念公園(広島市中区)では人の数に反して圧倒的な静寂を感じた。そこには平和や希望、和解、そしてレジリエンスという広島の力強い象徴が確かに存在していた。戦後広島が成し遂げた軍都から平和と復興のシンボルへの生まれ変わりは、紛争から脱却し、復興を目指すわが国にとって具体的なモデルである。
エチオピアは長い間、内戦や政治紛争による苦痛に耐えてきた。広島が経験した惨劇は決して繰り返されてはならないが、破壊が国の運命を決定づけるものではないということを示している。共に立ち上がれば強固で平和な主権国家とその未来を築くことができることも教えてくれている。
広島が国際平和都市として見事に復興したように、エチオピアもまた、インフラの再建だけでなく、未来を見据えて動く時だ。国際社会でさらに多くの信頼を得るためには団結を基本としながらも文化の多様性を尊重する国家運営を推進する必要がある。
平和とは紛争の不在を意味するものではなく、正義と相互尊重の存在があって初めて成立するものである。齟齬(そご)があれば解決に向け、お互いの違いを学ぶアイデンティティーとして心に刻まれるべきものだ。広島が世界に発信するメッセージと同様、エチオピアも未来志向で世界平和に貢献するために声を上げていきたい。
最後に、未来を見据えたとき、大いなる希望を与えてくれる存在、それが広島だ。人類史上最悪の戦争兵器によって破壊された都市が平和の象徴として再び立ち上がることができたのなら、古代文明発祥地の一つで、アフリカで植民地支配から唯一独立を保ってきたエチオピアは広島の歩みと同様、それ以上のことを成し遂げることができるはずだ。私はそう信じている。
(2025年7月10日朝刊セレクト掲載)
平和記念公園(広島市中区)では人の数に反して圧倒的な静寂を感じた。そこには平和や希望、和解、そしてレジリエンスという広島の力強い象徴が確かに存在していた。戦後広島が成し遂げた軍都から平和と復興のシンボルへの生まれ変わりは、紛争から脱却し、復興を目指すわが国にとって具体的なモデルである。
エチオピアは長い間、内戦や政治紛争による苦痛に耐えてきた。広島が経験した惨劇は決して繰り返されてはならないが、破壊が国の運命を決定づけるものではないということを示している。共に立ち上がれば強固で平和な主権国家とその未来を築くことができることも教えてくれている。
広島が国際平和都市として見事に復興したように、エチオピアもまた、インフラの再建だけでなく、未来を見据えて動く時だ。国際社会でさらに多くの信頼を得るためには団結を基本としながらも文化の多様性を尊重する国家運営を推進する必要がある。
平和とは紛争の不在を意味するものではなく、正義と相互尊重の存在があって初めて成立するものである。齟齬(そご)があれば解決に向け、お互いの違いを学ぶアイデンティティーとして心に刻まれるべきものだ。広島が世界に発信するメッセージと同様、エチオピアも未来志向で世界平和に貢献するために声を上げていきたい。
最後に、未来を見据えたとき、大いなる希望を与えてくれる存在、それが広島だ。人類史上最悪の戦争兵器によって破壊された都市が平和の象徴として再び立ち上がることができたのなら、古代文明発祥地の一つで、アフリカで植民地支配から唯一独立を保ってきたエチオピアは広島の歩みと同様、それ以上のことを成し遂げることができるはずだ。私はそう信じている。
(2025年7月10日朝刊セレクト掲載)