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社説・コラム

『想』 立花志瑞雄(たちばなしずお) 思いを引き継ぐ

 被爆80年。被爆者である義理の父母、実父もすでにこの世にはなく、今年の8月6日を共に迎えることはありません。

 80年の間、核兵器が使用されなかったことは喜んでいるとしても、いまだに核兵器廃絶が実現していないことに歯がゆい思いをしていることでしょう。それは今は亡き多くの被爆者も同じでしょう。

 私が関わっているワールド・フレンドシップ・センター(WFC)は1965年8月7日、広島市中区の縮景園に集まった市民と共に、米国人のバーバラ・レイノルズさんによって創立されました。私がまだ10歳にも満たない頃です。

 WFCはこの夏、創立60周年を迎えます。創立のきっかけは1964年にバーバラさんが企画した「広島・長崎世界平和巡礼」です。メンバーは約40人。うち被爆者は25人(広島19人、長崎6人)でした。通訳として学生も参加しました。さまざまな背景がある被爆者が4月から7月まで米国、欧州、ソ連の8カ国150都市を訪れ、核兵器の廃絶と世界平和を訴えました。

 この平和巡礼の精神は現在も引き継がれ、WFCの「平和使節交換プログラム」として生きています。今年は9月19日~10月3日の日程で6人が米国に派遣されます。被爆者、被爆2世、被爆3世、大学生、高校生という幅広いメンバー構成です。

 使節団はワシントン州、オレゴン州を訪問した後、オハイオ州に移動し、ウィルミントン大を訪れます。同大にはバーバラさんが帰国後に創立した平和資料センターがあります。今年創立50周年を迎え、記念イベントと使節団の訪問が重なります。

 小さな組織が60年間活動を続けることは、並大抵のことではありません。そこには多くの人たちの無私の働き、支えがありました。今は亡き多くの被爆者、平和をつくりだすために核兵器廃絶と世界平和を訴え続けてこられた方々の思いを引き継ぐ、被爆80年の8月6日としたいと思います。 (NPO法人ワールド・フレンドシップ・センター理事長=広島市佐伯区)

(2025年8月6日朝刊セレクト掲載)

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