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被爆80年 核廃絶「諦めない」 広島平和宣言「市民社会の総意に」 若者に行動呼びかけ

 米軍による原爆投下から80年となった6日、広島市は平和記念公園(中区)で原爆死没者慰霊式・平和祈念式(平和記念式典)を営んだ。松井一実市長は平和宣言で「決して諦めることなく、核兵器廃絶への思いを市民社会の総意にしていかなければならない」と強調。被爆者の平均年齢が86歳を超える中、次代を担う若い世代に行動を呼びかけた。(渡辺裕明)

 国内外の被爆者や遺族、市民たち約5万5千人が参列。今年は海外の政府代表を「招待」する形から開催を案内する「通知」に変え、初めてのパレスチナ自治政府や台湾を含め過去最多の120カ国・地域と欧州連合(EU)が出席した。

 松井市長は平和宣言で、混迷を深める国際情勢下で核兵器保有を容認する考えが為政者に広がりつつあるとして警鐘を鳴らした。「平和文化」が広がれば「核抑止力に依存する為政者の政策転換を促す」と説き、若い世代の行動を期待した。

 昨年のノーベル平和賞を受けた日本被団協の訴えなどを踏まえ、日本政府へ来年11月にある核兵器禁止条約の第1回再検討会議にオブザーバー参加するよう要請。日本被団協代表委員や広島県被団協理事長を務めた亡き坪井直(すなお)さんが核兵器のない平和な世界へ唱え続けた言葉「ネバーギブアップ」も引き、被爆体験を継ぐ大切さを伝えた。

 式典は午前8時に開式。この1年に死亡が確認された広島の被爆者4940人を書き足した原爆死没者名簿が原爆慰霊碑の石室に納められた。名簿は2冊増え130冊計34万9246人分になった。原爆投下時刻の8時15分に「平和の鐘」の音に合わせ、全員で黙とう。平和宣言に続き、小学6年生2人が「平和への誓い」を発表した。

 石破茂首相は「唯一の戦争被爆国であるわが国の使命」として、非核三原則を堅持し「核兵器のない世界」へ国際社会の取り組みを主導すると表明した。禁止条約には触れなかった。広島県の湯崎英彦知事は核抑止に疑問を呈し、「抑止力から核という要素を取り除かねばならない」と訴えた。式台上には初めて防弾パネルが置かれた。

 今年3月末時点で被爆者健康手帳の所持者は9万9130人。平均年齢は86・13歳となった。

(2025年8月7日朝刊掲載)

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