×

ニュース

「ゼロ回答」被爆者落胆 「要望を聞く会」で国家補償巡り 首相、従来政府見解述べるのみ

 石破茂首相が出席する広島市主催の「被爆者代表から要望を聞く会」が6日、中区のホテルであった。二つの広島県被団協など7団体は日本被団協が求め続けてきた原爆被害への国家補償を要望した。ただ首相による回答はなく、被爆者からは落胆の声が漏れた。(和多正憲、野平慧一)

 7団体の要望書は、国が戦後、旧軍人らに恩給などを払う一方、自らは被爆していない原爆孤児や遺族を援護の対象外とした状況に触れ「公平に償わねば『戦後』は終わらない」と訴えた。県被団協の箕牧(みまき)智之理事長は被爆80年の節目に合わせ「活動の原点に立ち返る」とし、国家補償の実現を迫ったが、首相の回答はなかった。

 背景には戦争被害は国民が等しく我慢するべきだとする「受忍論」の壁がある。会合後の記者会見でも首相は国家補償に関し「繰り返しの答弁はしない」と従来の政府見解を述べるにとどめた。

 懇談後、箕牧理事長は「戦争被害を国民は受忍しろ、我慢しろということか。防衛予算を上げるくらいなら補償してほしい」と批判した。

 一方、首相は被爆者団体との面会を増やすことには前向きな姿勢を示した。懇談では「機会を増やさないといけない」と言及。米国の核兵器を日本で運用する「核共有」については「非核三原則を守る」と否定した。

 石破首相はこの日の平和記念式典のあいさつで平和記念公園(中区)南側にある「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に刻まれた短歌「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」を2度読み上げた。被爆者との懇談でも「あの短歌を読んで涙しない人はいない。その思いを共有することも大事なことだ」と強調した。

(2025年8月7日朝刊掲載)

年別アーカイブ