『想』 田中美穂(たなかみほ) 今こそ具体的な行動を
25年8月7日
8年前、就職で広島へ移り住んだ私は、被爆者サーロー節子さんの「祈るだけでなく、具体的な行動を」という言葉に背中を押され、仲間とカクワカ広島を立ち上げました。以来、核政策や核兵器禁止条約への考えを尋ねるため、国会議員と面会を重ねています。活動を続けるうちに、「唯一の戦争被爆国」という言葉の陰で、核兵器がもたらす不条理や痛みが見過ごされていることに気付かされました。
被爆から80年がたった今も、被爆者と認められず、援護を受けられない人々がいます。広島で「黒い雨」を浴びた人々や、長崎の「被爆体験者」、朝鮮半島で暮らす被爆者などです。核保有国は、米国やマーシャル諸島、カザフスタンなど、世界各地で2千回以上核実験を行ってきました。核兵器は、健康や土地、文化、思い出、人生までも奪います。核抑止政策への依存を強める日本に住む私たちは、核の問題を過去の歴史としてではなく、今を生きる私たちの課題として受け止める責任があるはずです。
核兵器は、一方の「安全」や利益のために、もう一方の命や暮らしが犠牲になるという不平等の構造をはらんでいます。その構造は、実は社会のあちこちに存在しています。沖縄への基地の押し付けや米兵による性暴力、在日朝鮮人や性的マイノリティーへの差別、外国人へのヘイトスピーチ、原発政策、気候危機、そしてパレスチナで続く虐殺―。これらの問題はいずれも「命や尊厳がないがしろにされる社会」という共通の構造の上に成り立っているのです。だからこそ、加害や差別の構造に向き合い、不正義に声を上げることもまた、「核なき世界」への行動だと私は信じています。
今年、広島と長崎への原爆投下から80年を迎えます。この節目は、単なる記憶の継承にとどまらず、記憶にどう応答し、未来に何を手渡すのかを問う時間でもあるのではないでしょうか。どんなに小さなことでも、具体的な行動を共に重ねていけたら幸いです。(核政策を知りたい広島若者有権者の会=カクワカ広島=共同代表)
(2025年8月7日朝刊セレクト掲載)
被爆から80年がたった今も、被爆者と認められず、援護を受けられない人々がいます。広島で「黒い雨」を浴びた人々や、長崎の「被爆体験者」、朝鮮半島で暮らす被爆者などです。核保有国は、米国やマーシャル諸島、カザフスタンなど、世界各地で2千回以上核実験を行ってきました。核兵器は、健康や土地、文化、思い出、人生までも奪います。核抑止政策への依存を強める日本に住む私たちは、核の問題を過去の歴史としてではなく、今を生きる私たちの課題として受け止める責任があるはずです。
核兵器は、一方の「安全」や利益のために、もう一方の命や暮らしが犠牲になるという不平等の構造をはらんでいます。その構造は、実は社会のあちこちに存在しています。沖縄への基地の押し付けや米兵による性暴力、在日朝鮮人や性的マイノリティーへの差別、外国人へのヘイトスピーチ、原発政策、気候危機、そしてパレスチナで続く虐殺―。これらの問題はいずれも「命や尊厳がないがしろにされる社会」という共通の構造の上に成り立っているのです。だからこそ、加害や差別の構造に向き合い、不正義に声を上げることもまた、「核なき世界」への行動だと私は信じています。
今年、広島と長崎への原爆投下から80年を迎えます。この節目は、単なる記憶の継承にとどまらず、記憶にどう応答し、未来に何を手渡すのかを問う時間でもあるのではないでしょうか。どんなに小さなことでも、具体的な行動を共に重ねていけたら幸いです。(核政策を知りたい広島若者有権者の会=カクワカ広島=共同代表)
(2025年8月7日朝刊セレクト掲載)