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[被爆80年] 慰霊祭 高齢化に向き合う あいさつ検証 継承誓う若者も

 被爆から80年となった6日に広島市など各地であった慰霊祭。式典でのあいさつを検証すると、平和を願う声とともに、被爆者や参列者の高齢化に注目した内容が目立った。参列者は年々減少。被爆者団体の運営も厳しい状況に直面している。当事者の記憶をどう継承していくのか。広島が向き合う課題もあらためて浮き彫りになった。

 中区の平和記念公園であった川内・温井義勇隊追悼法要。遺族会の柳原有宏会長(82)は核兵器廃絶を訴えたあいさつをこう結んだ。「40年前はこの場に300人以上が集まっていた。いろんなことが失われつつある。忘れつつあることがたくさんある。それを考えながら、しっかりと継承していただければ」。集まったのは約60人だった。

 慰霊祭に参加してきた被爆者にも例外なく高齢化の波が押し寄せる。3月末時点で被爆者健康手帳の所持者の平均年齢は86・13歳となった。

 湯来原爆被爆者の会の内藤紘治会長(84)は佐伯区湯来町であった慰霊式で、昨年7月から今年6月までに17人の会員が亡くなったと説明。「会員減少、高齢化は避けて通れないことだが核兵器廃絶、恒久平和実現に向かって皆さまと努力していきたい」と前を向く。

 大竹市原爆被害者友の会の賀屋幸治会長(72)も大竹市であった原爆死没者追悼・平和祈念式典で「2世会員も高齢化し、会の運営は厳しい状況」と強調。各地の慰霊祭出席者からは「参加は最後かも」との声が上がる。

 慰霊祭には高校生ら若い世代も出席し、継承を誓う言葉が並んだ。平和記念公園であった県動員学徒等犠牲者の会原爆死没者追悼式。舟入高生徒会長の2年渡辺菜月さん(16)は「被爆者に直接話を聞ける時間はもう多くは残されていない。被爆者のいない時代が迫る今だからこそ、多くの人が戦争の悲惨さを語り継ぎ、核兵器のない世界を訴え続けていかなくてはならない」と決意を述べた。

(2025年8月8日朝刊掲載)

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