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[被爆80年] 核廃絶へ 都市の役割探る 平和首長会議総会 本格討議入り

 長崎市で開かれている平和首長会議の総会は8日、本格的な討議に入った。核兵器使用で住民に危険が及ぶ恐れがある自治体の立場から、具体的な被害想定に基づく廃絶の訴えや若者への軍縮教育の必要性を確認した。

 廃絶に向けた都市の役割をテーマにしたパネル討論では、専門家や首長たち6人が登壇した。オーストリア外務省のアレクサンダー・クメント軍縮局長は、都市で核兵器が使われた場合の医療や食糧供給への影響を挙げ「抽象的な安全保障政策の議論から離れ、実際の経験に焦点を当てるべきだ」と指摘。被害を起こさせないのが唯一の道とし、核兵器禁止条約の拡大を訴えた。

 英マンチェスターのカーマイン・グリムショー市長は「政府レベルの議論を聞いていると、『安全保障の脅威』といった言葉が聞かれるが、不信感や疑念を助長する」と危惧。市民への説明の仕方を考慮すべきだとの認識を示した。会場から発言した広島なぎさ高(広島市佐伯区)2年の河村波音さん(16)は「都市は、国益を超え地球益を担う役割を」と求めた。

 パネル討論に先立ち、長崎で被爆した日本被団協代表理事の横山照子さん(84)が証言した。被爆後から入退院を繰り返し、44歳で亡くなった妹から「私は何の罰を受けているの」と問われ、何も言えなかった経験を吐露。「戦争さえ、原爆さえなかったら、妹の人生は素晴らしかったはずだ」と訴えた。

 この日は16カ国151人が参加。分科会も始まり、人権・難民などを題材に討議した。(下高充生)

(2025年8月9日朝刊掲載)

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