[戦後80年] 517人が犠牲 岩国駅前空襲 証言集 市が復刻版
25年8月9日
300部 小中高や図書館に配布へ
太平洋戦争の終戦直前に岩国市の岩国駅周辺が米軍の爆撃を受けた駅前空襲から14日で80年となるのを前に、市は体験者の証言をまとめて1970年に発行した小冊子「岩国駅周辺被爆記録」の復刻版をつくった。被害の実態を次世代に伝えていくため、市内の小中学校や高校に配る。(長久豪佑)
空襲は1945年8月14日にあり、駅周辺が米軍機の集中爆撃を受けた。市史によると死者は517人とされる。市は70年に、空襲を体験した市職員や当時の町内会長たち16人から証言を聞き取る座談会を実施。内容を49ページの小冊子にまとめた。関係先に配ったという。
「死体のある場所で木を拾ってきては焼いた」「駅などはもう建物が全然なく、機関車なんかは田の中に倒されてしまった」…。生々しい証言が記録されている。原爆投下後の広島に救援で入り、岩国に戻って空襲に遭った人もいた。
復刻版はA4判34ページの冊子で、こうした内容を再掲している。空襲前の駅舎や爆撃直後の街並みの写真も新たに掲載。表紙には、爆撃で無数の穴ができた駅周辺の空撮写真を配している。
市が戦後80年の節目に復刻を決め、今月完成した。300部を作成し、市内の小中高計49校や図書館などに配布する。市福祉政策課は「被害を知る人が少なくなっている。若い世代に体験をつないでいきたい」としている。
(2025年8月9日朝刊掲載)