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新作能上演 戦争語り継ぐ 東京で喜多流大島家

 終戦の日の15日夕、平和を祈り戦争を語り継ぐ新作能「巣鴨塚 ハルの便り」が、東京・目黒の喜多能楽堂で上演された。戦後80年の節目に、喜多流大島家5代目の大島輝久さん(49)=福山市出身=がシテ(主役)を務め、姉で能楽師の衣恵さん(50)=同市=も出演した。

 A級戦犯として処刑された元陸軍大将の板垣征四郎の亡霊が思いを語る内容。原作者で現代美術作家の杉本博司さん(77)が、巣鴨プリズンでの処刑前に詠んだ板垣の漢詩に着想を得た作品で、上演前に「戦中戦後の苦難を語り継ぐ使命感を持って作った」と解説した。

 国を思う板垣の心情を表現した輝久さんは「80年を経て悲惨な歴史をどう解釈して生かすか求められる時代。当時のことに興味を持つきっかけにしてほしい」と強調。冒頭に優美な舞を披露した衣恵さんも「能は善悪の答えを出すものではない。胸の内でそれぞれが考えて」と語った。

 十四世六平太記念財団などの主催。今春に改修工事を終えた喜多能楽堂では、広島と長崎に原爆が落とされた今月6日と9日に、原爆開発を主導した米国の物理学者ロバート・オッペンハイマーを取り上げた英語能も上演した。(堀晋也)

(2025年8月17日朝刊掲載)

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