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竹野内豊「歴史を体感 記憶に刻んで」 日本海軍の駆逐艦に光 映画「雪風」艦長役で主演

 公開中の山田敏久監督の映画「雪風 YUKIKAZE」。太平洋戦争でも沈むことのなかった日本海軍の駆逐艦「雪風」の史実に光を当て、架空の登場人物が本音をぶつけ合う人間ドラマだ。米英との戦争に反対しながらも、艦長として最前線に立った寺澤一利役で主演した竹野内豊は「あの時代を生きた日本人の姿を見て、立ち止まって考えるきっかけになればうれしい」と話す。

 ミッドウェー海戦やレイテ沖海戦、戦艦大和が沈んだ沖縄特攻の激戦に参加し、海に投げ出された僚艦乗員の救出にあたった「雪風」。終戦後は復員輸送船として外地に残った人々も運んだ。

 「九死に一生はあっても、十死零生などという戦法はない」「人間性に反する」。特攻作戦を寺澤が批判する場面を挙げ、竹野内は「あのせりふは深く共感することができた」と振り返る。

 雪風の下士官をまとめる先任伍長役を玉木宏、水雷員役を奥平大兼、第二艦隊司令長官役を中井貴一、寺澤の妻を田中麗奈が演じた。竹野内は「素晴らしいキャストが一致団結して取り組んだ。不安を抱えたまま撮影に入った私が、気付いたら艦長にしてもらっていた」と感謝する。

 「過ちを繰り返してはならないと思いながらも、人間はそれを繰り返す」と竹野内。「歴史を知識として学ぶだけでなく、当時を生きた人々の情景を映画で体感することで、記憶の奥深くに大切なことが刻まれるのだろう」と受け止める。

 寺澤と乗員が立場の違いを超えて意見交換する劇中の描写は、違和感もある。ただ、創作だからこそ、当時は口に出せず手紙にも残らない本音を随所に盛り込めたのだろう。

 軍港・呉に暮らし、海軍工廠(こうしょう)で設計の仕事をする寺澤の義父は語る。「日本はかじの利かん船になってしもうた。全力で沈まんように頑張るしかありゃあせん」。戦後80年の今を生きる私たちへの警鐘のようでもある。(渡辺敬子)

(2025年8月16日朝刊掲載)

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