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連載・特集

朝凪(あさなぎ) 「終戦」の日は「解放」の日

 広島市内で今月、朝鮮半島出身の原爆犠牲者を追悼する集会を取材した時のことだ。ある被爆者が話してくれた。「本当の名前を名乗ることができたのは『終戦』の後です」

 日本が植民地支配していた朝鮮半島から海を渡った両親の元に出生。「創氏改名」によって強いられた日本式の名前で子ども時代を過ごした。そして広島で被爆した。広島壊滅から9日後の「終戦の日」は、名前という尊厳を奪われた者にとって「解放記念日」となった。だがその後も、あまたの差別を受けながら生きざるを得なかった。

 「過去を忘れちゃいかん」と苦労を重ねた体験を語る言葉は、私にはこうも響く。目を背けたい、都合の悪い事実であっても歴史を学び、向き合って―。戦後80年の8月15日、反すうする。(平和メディアセンター・小林可奈)

(2025年8月15日朝刊掲載)

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