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[被爆80年 いま伝えて] 平和の誓い 私たちが紡ぐ 三次市の平和非核都市宣言

 ≪明日(あした)も笑いあえるように 手をつないでいられるように 私たちは永遠の平和を望む(後略)≫

 柔らかな言葉で紡がれる三次市平和非核都市宣言。被爆80年の今夏も1日に三良坂町の三良坂平和公園で開かれた市主催の「平和のつどい」で地元の小中学生4人が朗読した。戦争も核兵器もない世界へ―。宣言を刻む石碑が立つ公園に集った市民たち約500人と、その意味をかみしめた。

 宣言は20年前の2005年6月に生まれた。識者や被爆・戦争体験者たち11人でつくる草稿検討委員会には、市内の高校生3人も名を連ねた。

 全国の多くの自治体も宣言をつくり、「世界の恒久平和」「核兵器の全面撤廃」など硬めの言葉が並ぶ。三次市によると、目指したのは「分かりやすい宣言」。高校生が編んだ文案がベースになったという。

身近な視点で

 「私たち戦争を知らない世代も含めて幅広く響き、記憶にも残る宣言にしたくて」。当時、日彰館高3年の生徒会副会長だった会社員藤丸さおりさん(38)は振り返る。

 「笑いあえる」「手をつないで」…。これらの言葉は生徒会のメンバーたちと考え合った。「簡単そうで、本当に相手を大切にしないとできないこと。平和って、気持ちを寄せていくところから始まると思うんです」

 検討委員の一人だった山内小(庄原市)教諭の中村隆太郎さん(38)も同じ思い。三次高3年の生徒会長だった当時を思い起こし、「世界が、日本がという大きな視点も大事だけど、まずは身近なところから。そこに気付くきっかけに宣言がなってほしい」と話す。

次代に広がる

 藤丸さんや中村さんの願いは、次代の子どもたちに届いている。

 三次市郊外の全校児童12人の河内小。市の宣言を基にした同小の平和宣言がある。児童の言葉を盛り込み、2023年に誕生した。今月5日、校内で毎年開く平和の集いで、上級生が下級生にお手本を示しながら全員で読み上げた。

 ≪(前略)世界中で人が人の心をきずつけることのないように 私たちはけんかをしてもすぐに仲なおりします そして多くの命が戦争で消える悲しみを私たちは伝えていきます(後略)≫

 「大きな争いも、ささいなことから起きてしまうんだと思う。いつもの生活の中で自分に何ができるのか、しっかり考えていきたい」。6年の藤越琥太郎さん(11)と休束(きゅうそく)歩さん(11)たちは力強く誓う。(林淳一郎)

(2025年8月14日朝刊掲載)

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