資料集約 10月開始 「ノーモア・ヒバクシャ 継承する会」 ウェブ上で寄付金募る
25年8月13日
全国の被爆者運動の資料を収集、保存するNPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」(東京)は10月、分散している資料を集約する取り組みを始める。大学生協杉並会館(杉並区)に移し、一般公開する「継承センター」の設置を視野に入れる。「今残さなければ消えてしまう」と、寄付をウェブ上で募っている。
被爆者の体験記や日本被団協の活動記録など2万点を超える同会の資料は現在、東京都中野区やさいたま市の4カ所に分散している。杉並会館内の2部屋計28平方メートルに書庫を設け、まずは全体の3分の1を移転する。千代田区にある事務所も、2026年3月以降に移す。
会はかねて、資料を保存し、交流と活動の拠点となる「継承センター」の設立を目指してきた。杉並会館に書庫と事務所を構えた上で、センターへ発展させられるかの検討を進める。財源や専門家の確保が課題となる。
会はウェブ上で500~1万円を毎月寄付する支援者を募っている。15日まで。継承する会の伊藤和久事務局長は「被爆者の証言と闘いの歴史を未来に伝える一員になってほしい」と話す。
会は11年、ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが発起人になって発足した。日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(93)が昨年12月、ノーベル平和賞の受賞演説で会の活動を紹介。被爆者なき後の運動の在り方として「大きな参考になる」と述べていた。(宮野史康)
NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の伊藤和久事務局長に、継承センターの設置の狙いと現状の課題を聞いた。(聞き手は宮野史康)
―どのような施設を目指していますか。
日本被団協はノーベル平和賞を受賞するほど、足跡や活動内容は世界的なものだ。私たちは「人類の記憶遺産」と呼んでいる。被爆体験記や被爆者の実態調査の記録など世界の人に役立つ資料群を残していく。
単なる保存の場とは考えていない。「ノーモア・ヒバクシャ」は戦争を起こさない、核兵器を使わせない、核兵器をなくすという訴えだ。そのためのセンターとなる。被爆者が亡くなっていく今、受け継ぐ主役は、世界中の次の世代だ。自分ごととして取り組める所にしたい。
―課題は何ですか。
当初、6億円が必要だと見積もった。場所を確保し、30年、継続的に活動するという前提で、学芸員も雇用する。ただ、東京につくるには相当、お金がかかる。6億円では済まない。今は年1千万~2千万円を確保するのを目指している。支援者をウェブ上で募っている。さらに、生活協同組合や労働組合を中心に60ほどある賛助団体を倍増させたい。宗教や経済団体に広げる。
―被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員は平和賞の受賞演説で継承する会に触れました。
事前の打ち合わせは一切なかった。設立から10年余りの活動を見て、期待を寄せてもらえるようになったと思っている。受賞で関心は高まったが、あっという間に1年の節目が来る。今のうちに、センターの具体化を進めたい。
いとう・かずひさ
1947年茨城県土浦市生まれ。一橋大法学部卒。日本生活協同組合連合会渉外広報本部長、日本語教師を経て、2011年から現職。
(2025年8月13日朝刊掲載)
被爆者の体験記や日本被団協の活動記録など2万点を超える同会の資料は現在、東京都中野区やさいたま市の4カ所に分散している。杉並会館内の2部屋計28平方メートルに書庫を設け、まずは全体の3分の1を移転する。千代田区にある事務所も、2026年3月以降に移す。
会はかねて、資料を保存し、交流と活動の拠点となる「継承センター」の設立を目指してきた。杉並会館に書庫と事務所を構えた上で、センターへ発展させられるかの検討を進める。財源や専門家の確保が課題となる。
会はウェブ上で500~1万円を毎月寄付する支援者を募っている。15日まで。継承する会の伊藤和久事務局長は「被爆者の証言と闘いの歴史を未来に伝える一員になってほしい」と話す。
会は11年、ノーベル賞作家の大江健三郎さんらが発起人になって発足した。日本被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員(93)が昨年12月、ノーベル平和賞の受賞演説で会の活動を紹介。被爆者なき後の運動の在り方として「大きな参考になる」と述べていた。(宮野史康)
伊藤和久事務局長に聞く 「人類の記憶遺産」課題は資金
NPO法人「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」の伊藤和久事務局長に、継承センターの設置の狙いと現状の課題を聞いた。(聞き手は宮野史康)
―どのような施設を目指していますか。
日本被団協はノーベル平和賞を受賞するほど、足跡や活動内容は世界的なものだ。私たちは「人類の記憶遺産」と呼んでいる。被爆体験記や被爆者の実態調査の記録など世界の人に役立つ資料群を残していく。
単なる保存の場とは考えていない。「ノーモア・ヒバクシャ」は戦争を起こさない、核兵器を使わせない、核兵器をなくすという訴えだ。そのためのセンターとなる。被爆者が亡くなっていく今、受け継ぐ主役は、世界中の次の世代だ。自分ごととして取り組める所にしたい。
―課題は何ですか。
当初、6億円が必要だと見積もった。場所を確保し、30年、継続的に活動するという前提で、学芸員も雇用する。ただ、東京につくるには相当、お金がかかる。6億円では済まない。今は年1千万~2千万円を確保するのを目指している。支援者をウェブ上で募っている。さらに、生活協同組合や労働組合を中心に60ほどある賛助団体を倍増させたい。宗教や経済団体に広げる。
―被団協の田中熙巳(てるみ)代表委員は平和賞の受賞演説で継承する会に触れました。
事前の打ち合わせは一切なかった。設立から10年余りの活動を見て、期待を寄せてもらえるようになったと思っている。受賞で関心は高まったが、あっという間に1年の節目が来る。今のうちに、センターの具体化を進めたい。
いとう・かずひさ
1947年茨城県土浦市生まれ。一橋大法学部卒。日本生活協同組合連合会渉外広報本部長、日本語教師を経て、2011年から現職。
(2025年8月13日朝刊掲載)