原水禁・協の長崎大会閉幕【解説】廃絶 私たち市民の課題
25年8月10日
最後の力を振り絞るように原水爆禁止世界大会に参加した高齢の被爆者たちがいた。車いすを使ったり、つえを突き家族に体を支えられたり。被爆80年を迎えても、核兵器廃絶への道筋が見いだせない現状への強い焦燥感があるに違いない。
被爆者の思いを継承し、市民社会の力で廃絶を手繰り寄せるには―。今大会の議論の焦点はそこにあった。国内外の識者からは、幅広い市民運動との連携や、政治家への働きかけ、全ての核被害者の救済運動強化などの具体論が出た。
同時に、核抑止論の広まりという「逆風」も声高に語られた。核を巡る国際情勢が厳しさを増し、日本でも「核武装は安上がり」などと言う政治家が現れている。この状況をどう変えるか見通せていない。
一方で、原水爆禁止、核兵器廃絶に向けた運動はこれまでも逆風をはねのけてきた。核超大国が核兵器を増強した1960~80年代、「廃絶は絵空事」ともいわれた。それでも被爆者を先頭に、市民社会は粘り強く核兵器の非人道性を訴え続け、核軍縮を迫り、核兵器禁止条約制定を後押しした。
やがて「被爆者のいない世界」がやってくる。平均年齢は3月末時点で86歳を超えた。運動は若い世代を含め、私たち多くの市民に託された課題だ。
二つの世界大会開幕を前に、60年ほど前に分裂した原水禁国民会議と日本原水協は日本被団協と初の3者連名で、核廃絶に向けた行動に全国各地で取り組むよう呼びかけるアピールを出した。大会で共有したアイデアや課題を基に日本、世界へ運動を広げる具体策が重要となる。(編集委員・東海右佐衛門直柄)
(2025年8月10日朝刊掲載)
被爆者の思いを継承し、市民社会の力で廃絶を手繰り寄せるには―。今大会の議論の焦点はそこにあった。国内外の識者からは、幅広い市民運動との連携や、政治家への働きかけ、全ての核被害者の救済運動強化などの具体論が出た。
同時に、核抑止論の広まりという「逆風」も声高に語られた。核を巡る国際情勢が厳しさを増し、日本でも「核武装は安上がり」などと言う政治家が現れている。この状況をどう変えるか見通せていない。
一方で、原水爆禁止、核兵器廃絶に向けた運動はこれまでも逆風をはねのけてきた。核超大国が核兵器を増強した1960~80年代、「廃絶は絵空事」ともいわれた。それでも被爆者を先頭に、市民社会は粘り強く核兵器の非人道性を訴え続け、核軍縮を迫り、核兵器禁止条約制定を後押しした。
やがて「被爆者のいない世界」がやってくる。平均年齢は3月末時点で86歳を超えた。運動は若い世代を含め、私たち多くの市民に託された課題だ。
二つの世界大会開幕を前に、60年ほど前に分裂した原水禁国民会議と日本原水協は日本被団協と初の3者連名で、核廃絶に向けた行動に全国各地で取り組むよう呼びかけるアピールを出した。大会で共有したアイデアや課題を基に日本、世界へ運動を広げる具体策が重要となる。(編集委員・東海右佐衛門直柄)
(2025年8月10日朝刊掲載)