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連載・特集

緑地帯 明石英嗣 岡山の文学者が伝える戦後80年①

 吉備路文学館は、岡山市北区に本店を置く中国銀行の創立50周年記念事業として、1986年11月に開館した。岡山県全域と広島県東部の備後地区を「吉備路」と定義し、吉備路にゆかりのある近代以降の文学者を顕彰する登録博物館である。

 顕彰する作家の数は、出身地は吉備路ではないが、1カ月間だけ岡山市に滞在した夏目漱石もゆかりの作家と数え、150人を超える。さらに現代作家が新たに加わっているので、今後も増え続けるだろう。

 多くの文学者たちの作品に込められた「心ばえ」を伝えるため、著作物や取材メモ、愛用品を展示する特別展や企画展を年8回開催している。2015年の館長就任以来、いかにして地域ゆかりの文学者を次の世代へつないでいくか、試行錯誤を重ねてきた。1人の作家に焦点を当てたものもあれば、猫やスポーツ、校歌などをキーワードに、複数の作家を同時に紹介するテーマ展示も開いている。

 戦後80年という節目の年を迎え、6月22日から企画展「戦後80年 吉備路の作家たちが見た戦争」を開催中である。石川達三や里村欣三をはじめ、吉備路ゆかりの作家たちが戦時中どんな体験をし、その後、どういった作品を残したのかを展示を通して表現している。

 企画展にちなんで、岡山の文学者たちの平和へのメッセージを紹介したい。(あかし・えいじ 吉備路文学館館長=岡山市)

(2025年8月19日朝刊掲載)

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