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広島県被団協 手記集「空白の十年」を出版

■記者 東海右佐衛門直柄

 広島県被団協(坪井直理事長)は、被爆者の手記集「『空白の十年』被爆者の苦闘」を出版した。行政の援護策がほとんどなかった戦後の10年に焦点を絞った。就職や結婚に悩み、後障害に苦しんだ被爆者の心情が切々とつづられている。

 2007年からの手記募集に寄せられた122編のうち、71編を収めた。広島市東区の森田節子さん(76)は、腕などに残ったケロイドが原因で自殺を考えたことを告白。友人がダンスホールなどに通う中、青春を謳歌(おうか)できず「自分の存在までも認めたくない悲しい歳月があった」と記している。

 1956年の被団協設立まで被爆者の組織はなく、行政の援護策も不十分だった。いわれのない風評もあり、結婚や就職で苦しんだ被爆者は多い。

 木谷光太事務局長は「高齢化した被爆者からの最後の伝言と思ってほしい」と話している。207ページ。2千部印刷し、県内の図書館などに寄贈する。希望者には2千円程度の実費負担で配る。Tel082(241)7226。

(2009年8月5日朝刊掲載)

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