ヒロシマ80年の時映すアート 写真家 岸田哲平さん×コラージュアーティスト 河村康輔さん
25年8月23日
大竹の下瀬美術館で特別展 過去と今 写真を一体化
ライブカメラマンとして躍動する音楽家たちの表情を見つめてきた広島市西区出身の写真家岸田哲平さん(48)と、コラージュアーティストとして活躍する福山市出身の河村康輔さん(46)。2人がタッグを組んだ被爆80年の特別展が、大竹市の下瀬美術館で開かれている。(渡辺敬子)
岸田さんの祖父は、被爆翌日の広島市街の惨状を撮影したことで知られる貢宜(みつぎ)さん。貢宜さんによる1945年8月の広島の写真と、岸田さんによる今の広島を捉えた写真を、河村さんがコラージュの手法で一体化し、80年の時間を可視化させる試みだ。
広島市で写真館を営み、軍の報道班員だった貢宜さんは原爆が投下された8月6日朝、出張先の吉田町(現安芸高田市)にいた。午後には戻ったものの、ぼうぜん自失。「未曽有の惨状を後世に残さなければ」と気持ちを奮い起こし、翌日から死臭の漂う焼け野原を撮った。88年に72歳で亡くなるまで「広島原爆被災撮影者の会」の一員として記録の保存に力を尽くした。
孫の岸田さんは2011年の東日本大震災の被災地で、貢宜さんの仕事が頭に浮かんだという。「全く先の見えない中で、シャッターを切った祖父はすごい」。13年から祖父と同じ場所に立ち、人間の復興する力を表現しようと挑む。
今回のコラージュは、3人の合作といえる。岸田さんは24年8月7日、貢宜さんとほぼ同じアングルで広島市中区の福屋八丁堀本店から市内をパノラマ撮影した。河村さんは白黒とカラーの2人の写真を素材とし、シュレッダーで縦方向に裁断。キャンバス上で稜線(りょうせん)を合わせながら交互にのりで貼る緻密なコラージュ作品(縦36センチ、横200センチ)に再構築した。同じ写真を使い、150本のアルミ柱で構成した高さ2メートル、幅9メートルを超える立体作品もある。
断片の連なりは、戦後の広島が歩んだ時間の積層のよう。裁断面に生じたゆがみから不思議なぬくもりが漂う。河村さんは「2枚の写真の間に流れる時間や、人々が生きた物語を想像してほしい」と話す。
河村さんも、CDのジャケットデザインなどを手がけ、音楽愛が深い。中区のレコード専門店「ミザリー」を中心に平和を願って発行する冊子や音楽イベントのための創作を続け、その関連作品も出展している。漫画「AKIRA」の大友克洋さんとのコラボで知られ、ユニクロのTシャツブランド「UT」のクリエーティブ・ディレクターも務める。
それぞれ上京しつつも、ヒロシマの継承に思いを寄せる同世代の2人。「僕と祖父の記録から新しい作品が生まれたように、孫やひ孫の代へ思いがつながり、アクションを起こすきっかけになればうれしい」と岸田さん。河村さんも「音楽でも写真でも美術でもいい。自由な表現活動がどんどんつながり、誰かの記憶に残れば、平和を守る防波堤の役割を果たすだろう」と語る。
「HIROSHIMA2045 過去と現在を未来に繋(つな)ぐ」と題した同展は9月28日まで。祝日を除く月曜休館。
(2025年8月23日朝刊掲載)