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『ひと言』 被爆樹木2世 背景語る

 「平和だから花見ができる。この木が大きく育ち、みんなが木陰でサクラを楽しめたらいい」と語るのは、広島大名誉教授で被爆2世の上真一さん(75)。8月6日の朝に同大東広島キャンパス(東広島市)の被爆樹木2世を巡る散策会を、3年前から催す。

 学生からお年寄りまで約10~20人と歩く小さな集い。大学が設けた「平和の小道」に並ぶアオギリなど23本の背景を説きながら、世代を超えて世間話を交わす。和やかな1時間余りに「こういう時間も平和だね」。

 山陽小野田市出身。広島市佐伯区で送った少年期は日がな、里海でアサリやウナギを取った。広島大で水産学を学び、研究者の道へ。同大教授だった2004年、日本近海などで大量発生したエチゼンクラゲの人工繁殖に世界で初めて成功し、原因解明につなげた。

 特任教授だった17年、被爆樹木2世の植樹を大学に提案。広島市内の市民団体の協力を得て、20年に本格始動した。

 平和学習も大学教育と同様、上からの押しつけでは意味がないという。「『知りたい』と思う若者が学べる環境をつくり、後は託せばいい」。平和の小道も次に託せるよう、木陰ができるまでは散策会を続けるつもりだ。(教蓮孝匡)

(2025年8月26日朝刊掲載)

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