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ヒロシマの今 リアルな風景 広島出身の三浦さん、5ヵ所で写真展 母の被爆・復興期の記憶 根底に

 広島市南区出身のカメラマン三浦憲治さん(76)=東京都=の写真を市内5カ所で掲示するプロジェクト「ミウラヒロシマ」が開催中だ。2014年から毎年8月6日前後の市内を歩き、何げない瞬間を切り取った作品の根底には、母の被爆体験と復興期の記憶がある。(桑島美帆)

 終戦から4年後の1949年7月、南段原町(現南区)で生まれた三浦さんは、高校卒業までこの地で過ごした。母冴子さんは、南段原町の自宅で被爆。県庁に勤めていた父方の祖父や教員だった伯母の遺骨は今も見つかっていない。父の清博さんは徴兵されて山口県にいて無事だった。

 「夏になると家族で原爆供養塔と墓参りに行っていた。おふくろはその道中でぽろぽろっと話してくれるの。『この川いっぱいに死体が浮いていた』って」。自宅には爆風でガラスが突き刺さった食器棚があり、通っていた比治山小のプールの建設工事では、人骨がたくさん出てきた。

 「俺は原爆を体験した次の世代。日常の中で(被爆の痕跡が生々しい)ヒロシマの実体験がある」。18歳で上京後は、長年、芸能界に軸足を置いていたため、11年前に故郷と向き合い始めた当初は戸惑いの連続だった。しかし、すぐに無意識の勘が働くようになる。

 元安川河畔でひざまずき祈る高齢の女性、灯籠流しを見守る群衆、原爆供養塔に供えられた野菜…。作り込まず、偶然目にした光景はおのずと、戦争の傷痕や被爆者の人生、復興を成し遂げた街の風景を映し出す。「広島の人と今の広島を撮っている。どれもリアルなヒロシマだと思う。すごく面白い」

 「ミウラヒロシマ」は同名の写真集の出版を記念し、中区のパルコ広島店で10月13日まで、広島アンデルセン、八丁座、おりづるタワー、南区のジュンク堂書店広島駅前店で今月31日まで開催。各所に2~10点程度を掲示している。

みうら・けんじ
 海田高卒業後に上京し、東京写真短期大(現東京工芸大)在学中から写真家の長濱治さんに師事。雑誌やCM、国内外の有名ミュージシャンの撮影で活躍。主な写真集にYMO「OMIYAGE」、奥田民生「EZ」、「吉永小百合」など。

(2025年8月26日朝刊掲載)

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