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イチからわかる 中間貯蔵施設 <1> なぜ上関町で計画浮上?

 中国電力は、山口県上関町で検討している使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、「立地は可能」とする調査報告書を同町に提出しました。今後、同町が建設を受け入れるかどうかが焦点になります。なぜ上関町で計画されているのか、どんな施設なのか。シリーズで解説します。

町財政悪化 中電が「振興策」

リスクや風評被害 懸念の声も

 Q なぜ上関町で計画が浮上したのですか。
 A 上関町には、中電による原発の新設計画が40年以上前からあり、国の交付金や中電の寄付金で、町にはこれまで110億円以上がもたらされてきました。しかし福島の原発事故で計画は中断。国からの交付金は激減し、町の財政は急速に悪化したのです。町から新たな振興策を求められた中電が2023年に提案したのが中間貯蔵施設です。

 Q 原子力関連施設が地域の振興策なのですか。
 A もし建設が決まれば、町には工事などで多くの経済効果が見込まれます。また、国からの交付金で町財政も安定します。ただ、リスクが一定にある原子力関連施設を受け入れることに、安全性や風評被害を懸念する声は町内にもあります。

 Q 中電にはどんなメリットがあるのですか。
 A 中電は、島根原発(松江市)から出る使用済み核燃料を敷地内の燃料プールで保管しています。今はまだ貯蔵スペースに余裕がありますが、搬出先となる再処理工場(青森県六ケ所村)の完成が27回も延期される中、いずれ別の保管先を見つける必要がありました。また、中電は上関町との「共存共栄」を掲げて原発計画を推進してきました。今も原発計画は維持しており、町の財政が破綻するのを回避したい、という思惑もあるようです。

 Q 事業を共同で検討すると表明していた関西電力の狙いは何ですか。
 A 関電は福井県内に3原発を持ちます。老朽化した原発の再稼働を福井県に認めてもらった時、「県外で中間貯蔵施設の操業を目指す」と約束した経緯があるのです。燃料プールも余剰スペースがなく、対応が迫られています。

 ただ関電は、上関町の計画に全てをかけているわけでもなさそうです。同社は「あらゆる選択肢を検討していく」としています。青森県むつ市の中間貯蔵施設へ使用済み核燃料を搬入する案を指摘する声もあります。上関町やむつ市など複数の選択肢を手中に置き、メリットの多い計画を選ぶ戦略という見方も出ています。(編集委員・東海右佐衛門直柄)

(2025年8月31日朝刊掲載)

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