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[使用済み核燃料どこへ] 山口県上関町 中間貯蔵は「立地可能」【解説】次世代の視点踏まえ議論を

 中国電力が、山口県上関町の中間貯蔵施設の予定地を「適地」と判断したことで、計画は新たな局面に入った。原発を巡って40年以上も住民が翻弄(ほんろう)されてきた町は、再び原子力関連施設で重い判断を迫られる。

 室津半島の先端部にある同町の人口は既に2千人を切っているとみられる。かつて栄えた造船・鉄工業や漁業も振るわず、人口流出が続く。昨年、生まれた子どもはわずか2人。安定した財源と対策が急務となっている。

 同町では、中電による原発の新設計画を巡り、住民間の対立が続いてきた。福島第1原発事故後は一時、「原発に頼らない財源」も模索。しかし安定財源になっているとは言い難く、今回再び核関連施設に目が向くこととなった状況に悲哀もにじむ。

 だが、原発からの使用済み核燃料をどうするかは本来、国民全体の課題だ。「リスクのある施設は過疎地に」で済ませていい話ではない。

 今後、まちの針路をどう見定めていくべきなのだろう。町には国からの交付金を財源とした施設整備などの議論に終始するのではなく、中間貯蔵施設に不安を覚える人たちや次世代の視点も踏まえた丁寧な議論が必要になる。(加田智之)

(2025年8月30日朝刊掲載)

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