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日鉄呉跡地関連の防衛省概算要求 呉市や地元財界 進展期待 反対派、埋設物巡り懸念

 呉市の日本製鉄(日鉄)瀬戸内製鉄所呉地区跡地の取得に向けた経費6億円を盛り込んだ防衛省の2026年度予算の概算要求。複合防衛拠点の整備案を進める具体的な動きに、地元経済界などは「早期の経済効果につながる」と歓迎した。一方、汚染土壌などの対策なしで国費の投入は許されないという指摘もあった。(高木潤、野平慧一)

 防衛省に拠点の早期整備を要望してきた呉市は進展に期待した。跡地の不動産鑑定評価費は入らなかったが、新原芳明市長は「必要な経費が概算要求され、拠点整備が着実に進むものと期待している」とコメントした。

 呉商工会議所(呉市)の若本祐昭会頭も「測量や調査をしっかり進めれば、早期の購入契約締結につながる」と前向きに捉えた。防衛省が購入すれば、岸壁整備の工事や艦艇の補修などに、地元企業が参入する機会が増えると見込む。

 一方、拠点の整備に反対する市民団体「日鉄呉跡地問題を考える会」は、「住民抜き」で売買の動きが進んでいると批判する。団体の活動に携わり、環境法に詳しい元愛媛大教授の本田博利さん(77)は「跡地に埋設された廃棄物や汚染土壌の除去などの対策費の負担が防衛省に移り、国民の税金で賄うことにならないか」と懸念を示した。

 広島県は雇用を含む地域への影響や将来性が不明などとして詳細な説明を防衛省に求めてきた。県県内投資促進課は「引き続き防衛省や呉市と意見交換を行うなど地元経済の発展につなげていきたい」とした。

(2025年8月30日朝刊掲載)

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