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連載・特集

イチからわかる 中間貯蔵施設 <3> 周辺市町の住民が反対する背景は?

安全面や風評被害 懸念

山口知事の判断に影響 期待

 中国電力が山口県上関町で検討している使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、周辺市町の住民が建設反対の声を上げています。なぜ反対するのでしょう。こうした動きは建設計画にどのような影響を与えるのでしょうか。

 Q 周辺市町の住民はなぜ反対するのですか。

 A 自然災害などで施設が大きく損壊した際、放射線事故が起きるのでは、という安全面の不安が大きな理由です。また施設建設が決まった場合、周辺市町の観光・移住政策や農作物への風評被害につながることを懸念する声もあります。このため、上関町だけで建設受け入れの可否を判断してほしくない、という意見があるのです。

 核燃料を再処理する「核燃料サイクル」に対する不信感もあります。中間貯蔵後の搬出先となる再処理工場(青森県六ケ所村)は完成が27回も延期され、現在公表されている「2026年度内の完成」も遅れる可能性があります。もし完成しない場合、中間貯蔵施設は「半永久的な貯蔵地」になるのではないかという声もあります。関西電力の使用済み核燃料が持ち込まれることへの反発も強いです。

 Q 具体的にどんな動きがありますか。

 A 田布施町議会は3月、建設反対の決議案を賛成多数で可決しました。柳井市の住民団体は8月、計画に反対する市民約4千人の署名を添え、市議会に建設反対の決議を求める請願書を提出しました。平生町の住民団体も8月、建設反対を求める要望書を村岡嗣政知事に出しています。周防大島町では町主体の住民説明会の開催を求める請願を町議会が審議中で、周辺1市3町はいずれも何かしらの動きがあります。

 Q 周辺市町の反対で計画は変わるのですか。

 A 周辺市町は、上関町の判断に直接的には関与できません。ただ建設計画には知事の同意も事実上、不可欠で、村岡知事は「周辺自治体の理解も重要」としているのです。一部の住民は、反対運動が知事の判断に影響を与えることを期待しています。

 また上関町は施設建設による「安定した財源」を求めていますが、国の交付金の中には知事の同意が必要なものもあります。電源立地に関する交付金は、県と地元自治体で年間最大9億8千万円、交付期間は「都道府県知事の同意翌年度から2年間」です。知事の同意がなければ交付金は年間最大1億4千万円にとどまります。

 周辺1市3町の首長は、中間貯蔵施設の問題には連携して対応することにしています。上関町は国や中電に対し、周辺自治体への丁寧な説明を求めています。(加田智之)

(2025年9月2日朝刊掲載)

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