本紙連載2件 新聞協会賞 写真連載「里海の今」 被爆80年企画「ヒロシマ ドキュメント」
25年9月4日
通算18件 編集作品の同時は初
日本新聞協会は3日、優れた報道に贈る2025年度の新聞協会賞に、中国新聞社の写真連載「里海の今」と被爆80年企画「ヒロシマ ドキュメント」を含む7件を選んだ。中国新聞社の受賞は通算18件となり、編集作品の2件同時は初めて。10月15日、東京都での新聞大会で授賞式がある。
「里海の今」は瀬戸内海環境保全特別措置法(瀬戸内法)の制定50年を機に、23年11月6日に連載を始めた。水中カメラやドローン、360度カメラなどの最新機材を使い、東は福山市から西は山口県上関町までの海域を中心に、瀬戸内の自然と営みを切り取った。
授賞理由で「瀬戸内海の生態を水中や空中からの撮影を交え多彩に捉えた写真群は、色鮮やかで躍動感に満ちている。多角的な視点の記事と相まって、自然と人間が共生する重要性を丹念に伝えた」とたたえられた。
「ヒロシマ ドキュメント」は取材班を組み、24年8月5日に連載開始。1945年の被爆の惨禍を写真、手記などを基に暦に沿って同じ日、同じ時期に年末まで毎日報じた。戦後の広島の苦境や訴えも時系列で追いつつ、被害者一人一人の苦難にも迫った。
「膨大な資料を精査するとともに証言を掘り起こし、被害の実態を追体験させる迫真のドキュメンタリーに結実させた。被爆者運動の歩みもたどり原爆投下から現在への歴史のつながりを伝えた」と評価された。
新聞協会賞は57年に創設された。編集、技術、経営・業務の3部門を20年度に再編し、編集部門のみを新聞協会賞とした。25年度は48社105件の応募があった。中国新聞社の編集作品の受賞は、連載企画「ヒロシマの空白 被爆75年」(20年度)、写真連載「太田川 恵みと営み」(22年度)に続き、再編前を合わせ13件になる。
このほか、新聞技術賞に1件が決まった。新聞経営賞は該当がなかった。新聞広告賞の発表もあり、新聞社企画・マーケティング部門の奨励賞に、中国新聞社などが主催した地場企業とスタートアップ(新興企業)のマッチングイベント「TSUNAGU(ツナグ)広島」が選ばれた。
受賞 喜びと重み
岡畠鉄也中国新聞社社長の話
栄えある新聞協会賞に「里海の今」「ヒロシマ ドキュメント」が同時に選ばれ、喜びと重みをかみしめています。それぞれ取材に協力いただいた皆さまに深く感謝いたします。これからも瀬戸内海の魅力を伝え、取り巻く課題に向き合っていきます。惨禍の記憶を次世代に継承し、核兵器も戦争もない世界の実現に資するよう確かな報道に一層努めます。
【新聞協会賞】
日本郵便による不当に高額な違約金や不適切点呼をめぐる一連の特報 朝日新聞社(代表・東京本社編集局編集委員沢伸也)▽長野県石油商業組合「ガソリン価格カルテル疑惑」を巡る一連のスクープ 信濃毎日新聞社(代表・編集局報道部浜田朝子)▽「JR貨物脱線事故 破断した腐食レール」のスクープ写真 北海道新聞社(函館支社報道部写真映像課野沢俊介)▽写真連載「里海の今」 中国新聞社(編集局報道センター映像担当河合佑樹)▽阪神・淡路大震災30年報道 神戸新聞社(代表・阪神総局デスク兼編集局編集委員中島摩子)▽被爆80年企画「ヒロシマ ドキュメント」 中国新聞社(代表・編集局報道センター社会担当次長岡田浩平)▽NHKスペシャル「オンラインカジノ “人間操作”の正体」 日本放送協会(代表・前メディア総局プロジェクトセンター碓井南)
【新聞技術賞】
Ask!NIKKEI「広く、深く、早く知る。」ニュースに新たな価値を 日本経済新聞社
(2025年9月4日朝刊掲載)