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各党マニフェスト点検 核兵器廃絶 言及目立つ

■記者 道面雅量

 衆院選(18日公示、30日投開票)で各党が掲げるマニフェスト(政権公約)では、被爆地の切なる願いである核兵器廃絶への言及が目立つ。オバマ米大統領の就任を受けた国際的な廃絶機運の高まりも影響している、とみられる。その中で自民党は「核の脅威」からの防衛に力点を置き、「廃絶」の表現は入れていない。

 自民党は、「北朝鮮のミサイルや核の脅威から日本を守る」と、ミサイル防衛などでの日米同盟強化を主張。政権与党の「責任力」をうたう。一方でオバマ大統領が4月にプラハで演説した「核のない世界」に呼応するような、「核兵器廃絶」「核軍縮」の文言は盛り込まなかった。

 細田博之幹事長は4日、松江市での記者会見で「唯一の被爆国として核兵器廃絶へ努力する方針は今までと変わらない。北朝鮮に核兵器を持たせないことは最も大事」と説明。党広島県連の溝手顕正会長は「安全保障は現実に即した議論が必要だ」と話す。

 「政権交代」を掲げる民主党は、「核兵器廃絶の先頭に立つ」との項を設けた。北東アジア地域の非核化や包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効を目指し、来年の核拡散防止条約(NPT)再検討会議で「主導的な役割を果たす」と明記した。

 日本の非核三原則を韓国や北朝鮮にも広める北東アジア非核化は、同党の核軍縮促進議連会長である岡田克也幹事長の持論である。党広島県連の佐藤公治代表は「核兵器廃絶という到達点に向け、どう現実的な対応をするかは争点の一つになる」と論戦に前向きだ。

 公明党は「行動する国際平和主義」を掲げ、「核不拡散体制の強化を図るなど核廃絶へ世界をリード」との姿勢を示している。共産党は柱の一つが「平和外交」。オバマ演説を米国の「前向きな変化」ととらえ、核兵器廃絶へ積極的な役割を果たす、とした。

 社民党は「非核三原則を厳守し、被爆国として核廃絶の先頭に立つ」と強調。北東アジア非核地帯の創設などを提唱する。国民新党は「北東アジアの平和と安定、核廃絶に向けた積極的な政治主導外交を進める」との考え方を示した。幸福実現党は「北朝鮮の核ミサイルから国民の安全を守る」と訴えている。

 各党のマニフェストを読んだ広島市立大広島平和研究所の浅井基文所長は「核兵器廃絶を言うなら、日本として米国の『核の傘』を出るかどうかの議論は避けられない。各党の安全保障政策の全体像をしっかり見極めないといけない」と指摘している。

<核兵器廃絶をめぐる各党のマニフェスト要旨>

●自民党  記述なし(細田幹事長は「努力する方針は変わらない」と説明)

●民主党  核兵器廃絶の先頭に。北東アジア非核化、CTBT早期発効に力

●公明党  核廃絶へ軍縮で世界をリード。NPT再検討会議を成功させる

●共産党  核兵器廃絶へ積極的な役割。日米「核密約」を廃棄、非核の日本に

●社民党  非核三原則を厳守し、核廃絶の先頭に。北東アジアに非核地帯創設

●国民新党 北東アジアの平和と安定、核廃絶へ向け、政治主導外交を進める

(2009年8月5日朝刊掲載)

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