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[被爆80年] 惨状の秘めた記憶 活字に 廿日市の森田さん 同世代の伝える姿に心打たれ 元ケアマネ聞き書き 冊子に収録「語り継いで」

 被爆から80年近く、その苛烈な体験を秘めてきた廿日市市の森田トメヲさん(94)の証言録がこの夏、聞き書きの形でまとまり、冊子の一部として世に出た。平和を発信する同世代の被爆者の姿に触発され、かつて介護を担ってくれた女性に自ら、協力を求めたのだという。森田さんは今、あの日の出来事を「語り継いでもらいたい」と願っている。(下高充生)

 森田さんは1945年8月6日、爆心地から約2・5キロの己斐駅(現広島市西区)で被爆。「良い話ではないから」と誰にも詳しく語ってこなかった。記憶の封印を解いたのは、ニュースを通じ、90代の被爆者が懸命に証言する姿に心打たれたから。以前、ケアマネジャーを任せていた三宅文枝さん(71)=西区=が協力してくれることになり、昨秋から語り始めた。

 被爆当時は14歳。大野国民学校(現廿日市市の大野西小)高等科2年だった。広島市内の学徒動員先を目指し、己斐駅に着いた直後に閃光(せんこう)を浴び、両脚をけがした。「気が付いた時に己斐の駅がへしゃげとった」。逃げるさなか、片目に竹が刺さった女性を見たこと。仲が良かった近所の同級生3人の死…。やりきれない心情も吐露した。

 三宅さんは原爆被害者相談員の会(中区)の代表でもある。森田さんの証言を半年がかりでまとめ、1982年からほぼ毎年発行する「ヒバクシャ―ともに生きる」の第42号に加えた。「体験を語ってこなかった被爆者はまだいるはず。原爆被害の全体像をつかむための努力を続ける必要がある」と強調する。

 冊子には、会の相談員たち21人の手記も収録。8月6日に400冊を発行した。希望者に500円で配る。送料が別途必要。三宅さん☎080(1926)3382。

(2025年9月9日朝刊掲載)

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