[被爆80年] 「一番電車」車掌 4月に94歳で死去 笹口さんしのび演奏会
25年9月10日
西区で13日 三つの被爆楽器 共演
被爆直後の広島市内を走った「一番電車」に車掌として乗務し、今年4月、94歳で他界した被爆者笹口里子さんをしのんで三つの被爆楽器を奏でる平和コンサートが13日、西区民文化センターで開かれる。原爆の惨禍を乗り越えたギターとバイオリン、ピアノが初めてそろう。(桑島美帆)
笹口さんは、14歳だった1945年春、広島電鉄家政女学校に入学した。爆心地から約2キロの皆実町(現広島市南区)にあった寮で被爆。3日後、己斐―西天満町間で運転を再開した路面電車に乗務し「お金はいりません」と乗客から運賃を受け取らず、戦禍に苦しむ人々を勇気付けたことで知られる。
昨年11月まで、証言や取材の依頼に応じ、凄絶(せいぜつ)な被爆体験とともに、復興の象徴となった「一番電車」の記憶を語り続けた。13日のコンサートでは、冒頭、3年前に収録された笹口さんの証言動画を上映した後、ギタリストの石原圭一郎さん(67)=西区=が、被爆ギターでタレガの傑作「ラグリマ」を独奏。被爆ピアノ、被爆バイオリンやソプラノとともに名曲を披露する。
笹口さんの長女で児童文学作家ささぐちともこさん(64)の被爆ギターを描いた「ラグリマが聞こえる」(汐文社)を題材に、石原さんと平和コンサートを開いてきたソプラノ歌手大島久美子さん(57)=安佐南区=が企画した。ピアニストの谷崎友美さん、バイオリニストの三島文佳さんも出演する。
大島さんは「笹口さんは、人のため、平和のために動く原動力があった人。私たちも過去を知り、伝え、忘れないことの大切さを軸に、演奏したい」と意気込む。午後6時開演。3500円(前売り500円引き)、小中高大生は千円。大島さん☎090(9687)3282。
(2025年9月10日朝刊掲載)