戦前・戦中・戦後 記憶たどる 「戦争と美術、美術と平和」 広島県立美術館で所蔵作品展 ヒロシマ題材など100点
25年9月11日
広島県立美術館(広島市中区)で、所蔵作品展「戦争と美術、美術と平和」が開かれている。戦後80年企画。ヒロシマをはじめとした戦前・戦中・戦後の記憶を、4章構成、約100点でたどる。(木原由維)
第1章は第2次世界大戦渦中に制作された国外作家の作品を展示。国家公認の戦争画家としてシェルターに避難する人々を描いた英国の彫刻家ヘンリー・ムーア、ナチス・ドイツにより「退廃芸術」と見なされ弾圧を受けた画家パウル・クレーの絵画や版画から、戦争一色へと染まっていく時代の空気がにじむ。
戦前・戦中の国内に舞台を移した第2章。県物産陳列館(現在の原爆ドーム)では多くの美術展が催された。南薫造や丸木位里、靉光(あいみつ)たちの作品は、当時の広島画壇の熱意を伝える。やがて美術界も戦時体制に組み込まれ、戦闘機や戦車が進行する六角紫水の漆画、勇ましい3羽のワシを描いた児玉希望の「黎明(れいめい)」(1934年)は国威発揚の趣も帯びる。
第3章は「原爆の記憶」。原爆投下の翌日に見た夕焼け空を一晩で一気に彫り上げた朝井清。一方で、平山郁夫は被爆から34年がたった49歳の時、原爆をテーマにした唯一の作品「広島生変図」(79年)を描いた。想像を超える惨禍をどう表現するか。被爆直後、あるいは長い時間をかけて問い続けた画家たちの姿が浮かび上がる。
展覧会と同タイトルの最終章は戦後の作品群。圧巻なのは、広島で被爆した日本画家・宮川啓五の「太田川」(2000年)。幅約7メートルの大作で、画面左の上流から順に、四季の移ろいに重ねてヒロシマの歴史をたどる。満開の桜の下で花見客がにぎわう春、被爆して炎上する夏…。神内有理主任学芸員は「追悼、継承、怒り。どの作品も、惨劇を二度と繰り返したくないというメッセージは共通する。会場で受け取ってほしい」と語る。
10月5日まで。会期中無休。一般510円、大学生310円、高校生以下と65歳以上は無料。
(2025年9月11日朝刊掲載)
第1章は第2次世界大戦渦中に制作された国外作家の作品を展示。国家公認の戦争画家としてシェルターに避難する人々を描いた英国の彫刻家ヘンリー・ムーア、ナチス・ドイツにより「退廃芸術」と見なされ弾圧を受けた画家パウル・クレーの絵画や版画から、戦争一色へと染まっていく時代の空気がにじむ。
戦前・戦中の国内に舞台を移した第2章。県物産陳列館(現在の原爆ドーム)では多くの美術展が催された。南薫造や丸木位里、靉光(あいみつ)たちの作品は、当時の広島画壇の熱意を伝える。やがて美術界も戦時体制に組み込まれ、戦闘機や戦車が進行する六角紫水の漆画、勇ましい3羽のワシを描いた児玉希望の「黎明(れいめい)」(1934年)は国威発揚の趣も帯びる。
第3章は「原爆の記憶」。原爆投下の翌日に見た夕焼け空を一晩で一気に彫り上げた朝井清。一方で、平山郁夫は被爆から34年がたった49歳の時、原爆をテーマにした唯一の作品「広島生変図」(79年)を描いた。想像を超える惨禍をどう表現するか。被爆直後、あるいは長い時間をかけて問い続けた画家たちの姿が浮かび上がる。
展覧会と同タイトルの最終章は戦後の作品群。圧巻なのは、広島で被爆した日本画家・宮川啓五の「太田川」(2000年)。幅約7メートルの大作で、画面左の上流から順に、四季の移ろいに重ねてヒロシマの歴史をたどる。満開の桜の下で花見客がにぎわう春、被爆して炎上する夏…。神内有理主任学芸員は「追悼、継承、怒り。どの作品も、惨劇を二度と繰り返したくないというメッセージは共通する。会場で受け取ってほしい」と語る。
10月5日まで。会期中無休。一般510円、大学生310円、高校生以下と65歳以上は無料。
(2025年9月11日朝刊掲載)