天風録 『「副首都」大阪構想』
25年9月12日
東京都を新しく我(わ)が平和国家の首都として建設する。そんな目的をうたう首都建設法が75年前にできた。手本にしたのは原爆被害からの復興を目指す広島市の平和記念都市建設法。憲法に基づいた特別法の第1弾として前年に成立していた▲広島の特別法は力を発揮したが、首都建設法は短命に終わった。6年後に首都圏整備法ができて、廃止の憂き目に遭う。そのせいか、海外では憲法で首都を定める国が目立つ中、日本の首都東京は法的には曖昧なまま▲直下地震が懸念されるのに首都機能移転をはじめ災害への備えも進まない。第2の首都をつくる方が早そうだ。折しも、少数与党に日本維新の会が誘いをかける。協力する代わりに、大阪を「副首都」にする構想を進めてほしいのだろう▲大阪が副首都で良いか、賛否は分かれそうだ。ただ、東京一極集中を是正する一歩となる可能性は期待できる。地方にとって、決して悪い話ではあるまい▲3度目の大阪都構想の住民投票に道を開きたい―。そんな思惑も透けて見える。副首都の方言を第2の共通語にできるようにすれば、いつか大阪弁か博多弁、ひょっとして広島弁を全国で耳にする日が来るのかもしれない。
(2025年9月12日朝刊掲載)
(2025年9月12日朝刊掲載)