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アリ目線で戦争・原爆描く 広島の毛利さん、切り絵の新作絵本

 児童文学・絵本作家の毛利まさみちさん(79)=広島市中区=による新作の絵本「ありんことカンナの花」が出版された。小さなアリの目線から戦争や原爆を描き、焼け跡に咲くカンナに励まされて立ち上がる姿を広島市民に重ねた。

 毛利さんは原案と切り絵を手がけた。アリの社会にも人間の起こした戦争の波が押し寄せ、原爆の惨禍に襲われるというストーリー。緻密な切り絵を3年がかりで制作したという。

 特に悩んだのが、原爆に生き物が焼き尽くされる場面だった。「子どもにどこまで見せるか。原爆は怖いと知ってほしいが、見たくないと思われてもいけない」。残酷なシーンは1場面にとどめ、そのほかは子どもたちの想像力に委ねた。

 カンナは熊本で過ごした幼い頃から身近な存在だった。広島市での高校時代、焼け野原に咲いて市民を勇気づけたと知り、ずっと心に残っていた。ラストを彩るカンナは自宅で育てる実物を見ながら仕上げた。

 毛利さんが絵本で原爆をテーマにするのは3冊目。「ぜひ被爆80年に世に出したい」と出版社を回り、新進の地平社(東京)が応じて実現した。A4変型判、32ページ。1760円。(山本祐司)

(2025年9月15日朝刊掲載)

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