『生きて』 核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表 森滝春子さん(1939年~) <20> 共同代表に復帰
25年9月13日
10年後の再開催 もう一度奮い立つ
2015年の「世界核被害者フォーラム」のような取り組みは、1回で終わらせたくありません。でも、現実は厳しい。20年に出版した報告記録集の編集後記に「がん末期の状態にあり、次回を企画することは約束できない」と正直に書き、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会(HANWA)共同代表を退きました。
≪それでも病身にむち打つように、反核、反戦を訴える≫
パレスチナ自治区ガザやウクライナの市民の惨状に、胸がつぶれる思いです。HANWAは原爆ドーム前に約1500個の空き瓶を持ち込み、「NO WAR」などの文字に並べてろうそくをともす集会を開いています。いかなる非人道も許さないという意思の発信です。
核兵器禁止条約は21年、ついに発効しましたが、まだ通過点。ウランの利用が推進される限り、核被害や秘密裏の核兵器開発はなくなりません。被爆国日本も、核抑止にすがる政策を変えないでしょう。
≪昨年、共同代表に復帰した≫
きっかけは、米国を拠点に反核を訴える広島出身者たちとの出会いです。あの編集後記を読み、「ならば皆でフォーラムの企画を」と提案してくれたのです。私も決意を固めました。日本はもとより、ウラン鉱山がある米国の先住民居住区や、広島原爆のウランが採掘されたコンゴ(旧ザイール)などの当事者が集います。10月5日の初日を目指し、総出で奮闘中です。
あらゆる「核」は、先住民から土地を奪ったり、植民地支配のように地域の人を搾取したりすることで初めて成り立ちます。誰もが人間的に生きる権利と両立しません。強大な「核権力」という壁に立ち向かう市民と本気で連帯するのか、ヒロシマが問われているのです。
生前の父市郎が声なき原爆犠牲者の怒りを背負い、到達した「核絶対否定」の思想―。力を振り絞り、訴えを貫く覚悟です。 =おわり (この連載はヒロシマ平和メディアセンター・金崎由美が担当しました)
(2025年9月13日朝刊掲載)