ドキュメンタリー映画「ウナイ」平良いずみ監督 PFAS問題 国境を超えた女性の連帯
25年9月13日
怒り・不安 原動力に取材 広島で舞台あいさつ
有機フッ素化合物(PFAS)の汚染問題と向き合う国内外の女性たちの声を紡ぐドキュメンタリー映画「ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう」が13日から、広島市西区の横川シネマで上映される。2016年に水道水のPFAS汚染が明らかになった沖縄を拠点に取材を続ける平良いずみ監督。「沖縄以外でも調査が進む中、当事者は各地に広がっている。次世代の命と健康を守るため対策が必要だという世論を喚起したい」と語る。(渡辺敬子)
ウナイは沖縄の言葉で「姉妹」「女性たち」を意味する。環境への残留や健康影響が懸念される中、政治や企業に対して声を上げる女性たちの国境を超えた連帯にカメラが伴走する。市民の力が社会を動かし、規制の強化が進んだ米国やイタリアでの取材を通じて、環境行政に消極的な日本の姿勢、日米地位協定の壁を浮き彫りにする。
沖縄では基地への立ち入り調査を米軍が拒み、汚染発覚から9年たっても汚染源の特定すらできない。「経済や軍事の利益が優先する社会に男性は取り込まれている。目の前の命に対し、何のための経済かと問う女性たちのシンプルな主張に胸を打たれた」と平良監督。自身も母親として、汚染を知らずに水道水で作ったミルクを与えてしまった怒りと不安が取材の原動力となっている。
1999年、沖縄テレビにアナウンサーとして入社。基地問題や医療、福祉などのドキュメンタリーを手がけてきた。国内外でのPFAS問題の取材を深掘りするため、24年1月に退社。映像制作会社「GODOM沖縄」のディレクターとして本作を完成させた。
映画には、米軍川上弾薬庫がある東広島市に暮らす被爆者の女性や、流産を重ねた岡山県吉備中央町の女性も登場する。「環境中に放出されたPFASは除去が難しい。汚染を断つには汚染源の調査が欠かせない。先延ばしすることなく、命と健康に本気で向き合ってほしい」と力を込める。
横川シネマで14日午前10時からの上映後、平良監督と編集を担当した福山市出身の田辺志麻さんが舞台あいさつする。
(2025年9月13日朝刊掲載)