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FCLP 激しい騒音 住民への影響必至 米軍岩国基地で実施へ

 激しい騒音を伴う米空母艦載機の陸上空母離着陸訓練(FCLP)が米軍岩国基地(岩国市)で実施される見通しとなった。岩国市は12日に防衛省側から説明を受けたが、岩国でのFCLPは認めないというスタンスを崩さなかった。米軍が訓練に踏み切れば住民への影響は必至となる。(長久豪佑)

 FCLPは艦載機のパイロットが着艦資格を得るために不可欠な訓練とされる。車輪を地面に着けた直後に離陸する「タッチ・アンド・ゴー」を繰り返し、体に離着陸の感覚を覚えさせるという。周囲では大きな騒音が長時間続く。

 住宅地などが近くにあれば大きな影響が出るため、従来は小笠原諸島の硫黄島(東京都)の自衛隊施設が使用されてきたが、今回は硫黄島の噴火を踏まえてやめるという。岩国基地が最後に使われたのは2000年9月。夜間訓練があり、市や住民から反発が上がった。以降も訓練の予備施設には指定されたが、実行されなかった。

 硫黄島が台風の影響を受けた17年には米軍厚木基地(神奈川県)で実施されたこともある。この時にも周辺自治体などから批判の声が出た。防衛省はFCLPの硫黄島からの移転を見据え、鹿児島県西之表市の馬毛島で自衛隊基地の建設を進めている。しかし使えるようになるのは27年末の予定だ。

 岩国市は「FCLPを実施しないこと」を17年の空母艦載機受け入れの前提条件にした。基地政策の基本スタンスにも「容認できない」と明記している。ことあるごとに、この姿勢を米軍や国に伝えている。

 こうした経緯がある中で市にはこの日、中国四国防衛局から訓練実施の方針が伝えられた。「非常に大きな戸惑いがある」。福田良彦市長はそう述べた。市役所で深和岳人局長と面会し、訓練の取りやめを米軍に求めるよう伝えたという。

 一方、深和局長は取材に対し「(米軍が岩国で)行いたいということは変わらないと思う」と述べ「強行」される可能性を示唆した。

基地周辺 怒りや不安

 米軍の空母艦載機によるFCLPに岩国基地が使われると国から岩国市と山口県へ伝えられた12日、基地周辺の住民からは、怒りや不安の声が上がった。

 「岩国基地でFCLPをやらない、というのは空母艦載機移転の際の市の最低条件。岩国基地ではもうFCLPはやらないと信じてきたのに」。騒音を巡り、基地周辺の住民が航空機の飛行差し止めなどを国に求めた第2次爆音訴訟の原告団の吉岡光則事務局長(79)は憤った。

 吉岡事務局長は、住民投票にまで発展した空母艦載機移転までの基地の歴史を振り返り、「FCLPがあるから移転に反対との声が多かった」と強調。「これでFCLPが岩国基地であったら、市は市民に顔向けできない。国もけしからん。米側のやりたい放題だ」と語気を強めた。

 周辺には、2000年まで続いたFCLPの記憶が残る人が少なくない。その一人で川下町の農業野上悦生さん(75)は「着陸しようとして、ふかして離陸するの繰り返し。(いつもの)うるささとは違う」と懸念し、「市は国にもの申すべきだ。国も米側に伝えてきちんと対応すべきだ」と求めた。

 一方、基地に近い、旭第2自治会の為重英雄会長(75)は「どこかでやらないといけない」と理解を示す。「滑走路が沖合に移ってからは一度もFCLPをしていないので、本当にうるさいかどうかは分からない。一度やれば基準にもなる」と話す。  (川村奈菜)

広島県や大竹市「容認できない」

 12日に中国四国防衛局が岩国市に申し入れた米軍岩国基地でのFCLP実施を巡り、広島県や大竹市、廿日市市は容認できない考えを示した。

 大竹市にはこの日、同局の担当者が訪問。応対した入山欣郎市長は「滑走路が沖合移設されて以降、阿多田島の騒音が悪化している。今回の訓練を岩国基地ですることは容認できない。訓練計画の再考を求める」と訴えたという。

 県にも同局の職員が訪れ、FCLP実施について説明した。県国際課は「断じて容認することはできない。岩国基地を使用しないことを米側に強く求めてほしい」と伝えた。後日、文書でも防衛省や在日米大使館などに要請するという。廿日市市にも通知があり、同市は防衛相などに岩国基地で実施しないよう求める要請書を出した。

(2025年9月13日朝刊掲載)

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